神への関心
/icons/hr.icon
p274
人知の及ばぬ虚無との境目を守備する傭兵としての「神」の発明 神は真理自体でも、正義自体でも、神自体でもない。人知と虚無とのあいまいな境界を維持し、非在と所与の存在との間をぼかす管理人にすぎない。
ひとたび人間が『絶対』を心にうかべれば、世界の相対性と『絶対』との間の距離に耐えられない。
辺境守備隊(神)は、相対性の世界と絶対をぼんやりつなげてくれるように思わせてくれる。
傭兵たちがいなくなれば、虚無は生活へ入り込み、人間はふとしたことで深淵に落ち込む。
彼ら、神への関心によって、人間は虚無や非在や絶対に直面せずにすんできた。
人間は、人知が虚無を創り出すことなどできないと信じている。
はたしてそうだろうか。
虚無とは、目的を持ち、意志から発した行為が、行為のはじまった瞬間に、意志は裏切られ、目的は乗り超えられて、無意味なもののなかへ顚落(てんらく)すること。自ら望んだかのように、無意味の中へ飛び込むこと。 このようなことは20世紀のはじめからそこらじゅうでおこっていた。
科学的技術は、瀰漫する虚無に点火するすべを知っている。
しかし未だに虚無の管理者としての神とその管理責任を信じている人間は、安心して水爆の釦を押します。