歌の自己言及性
ぼんやりとした問題意識は以前から感じていたものの、この記事を書こうと思った直接的なきっかけとなったのは、ある歌番組で晩年の美空ひばりが世界的な名曲『マイウェイ』をカバーしていたのを最近見たからである。マイウェイの歌詞が、美空ひばりが自分のことを歌っているかのように聞こえてくるのである。そう、「歌の自己言及性」というのはつまり、歌手が自分のことを歌っているのではないかという風に聞こえてくる現象のことをいう。マイウェイに限らず、晩年の美空ひばりは歌が自己言及的になっているのが非常によく感じられる。『川の流れのように』や『愛燦燦』、『歌は我が命』などを思い浮かべるとよくわかるであろう。このような自己言及性は、シンガーソングライターのように自分で歌詞を書けば必ず生じるというようなものではない。提供された曲であってもカバー曲であっても生じる場合もあれば、自らの作詞でも生じない場合もある。 はじめ.icon