感情労働
社会学者アーリー・ホックシールド『管理される心』(原著刊行年:一九八三)によって唱えられた概念。「肉体労働」「頭脳労働」とは区別され、他者への気配りと配慮を是とする労働のこと。 本書では、現代社会における感情労働の代表的職業は、笑みや気遣いを絶やさないことが強く要請されるスチュワーデス・スチュワードのような客室乗務員であるとされたが、現代では接客を伴うサービス業、特に看護師などの医療職、介護士などの介護職、コールセンターのヘルプデスク、官公庁や企業の広報、苦情処理、顧客対応セクション、マスメディアの読者や視聴者応答部門などが幅広く注目されるようになってきた。
当時、感情労働はアメリカの労働者の三分の一にも達しており、感情労働は「感情表現にとんでいる」女性にふさわしいというジェンダー・バイアスがあるため、女性労働者では二分の一であり、男性労働者でも四分の一が感情労働に従事していた。
かつては肉体労働が一般的であったが、サービス産業の拡大によっていまや感情労働が一般的になった。感情が商品化され、感情管理にもとづく行為が労働として売られる。感情操作に巧みな労働者は(感情)市場での価格が高くなる傾向にある。
私たちは、葬儀の場では悲しそうな顔をしなければならないなどの感情規則に沿って私的に感情管理を行っているが、いまや企業によって感情の集中管理が行われている。