心理療法の理論の悪しき実体化
心理療法の理論の悪しき実体化という現象がある。心理療法の理論が語る心の構造を、実際にそのような構造をしていると考えてしまうことである。これは古今東西の心理療法に関わる者、現代の専門家に至るまで、このように考えてしまっている人は非常に多いように思える。そして、この実体化は二次災害を引き起こす。お互いに相互排他的になり、論争の火種となるのである。古今東西、心理療法というフィールドは論争が絶えない地帯である。心理療法の理論を実体視すれば、自分の依拠する心理療法のモデルが唯一正しいものとなり、他の心理療法のモデルは偽を語っているという理屈になってしまうからである。実際には、心理療法の理論はモデルを提供しているに過ぎないのである。ある便宜的なものに過ぎないのである。ここが理解されないため無用な論争が起こってしまう。本来、心という場は真偽が語れる場ではないのである。心理療法を巡って論争をする人たち(歴史的に有名な人も含め)が哲学をきちんと学べば、防ぐことのできる論争だろう。
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