唯識思想
唯識思想とアサンガ(無著)・ヴァスバンドゥ(世親)兄弟|じんぶん堂
仏教
の哲学的な思想に
唯識
思想というものがある。この思想は、
四世紀
頃のインドで、大乗仏教の思想家たちが空に対する思索を深める中でうまれた。彼らは「
すべての存在は唯識である
」と説いている。「唯識」とは、文字通りには「ただ
識
のみ」という意味になるが、この場合の「識」は、いわゆる対象を認識するはたらきのことではない。インドの古典語であるサンスクリット語では、対象認識をvijñānaという。眼や耳など感覚器官による認識(いわゆる五感)と、言語の使用や記憶などの関わる意識が、これにあたる。それに対して、
「唯識」という場合の「識」の原語はvijñaptiといい、「認識された結果」を意味している
。
「すべての存在は唯識である」とは、「あらゆる存在は認識の結果として見えているものに過ぎない」ということを意味している
。