元祖SF作品としての『フランケンシュタイン』
そう長くもないのでぜひ読んでみてほしいのだが、ホラーのつもりで読むときっと驚くはずだ。原作では「怪物に襲われる恐怖」より「科学技術がもたらす可能性」に焦点が合わせられており、ホラーというよりSF的な要素が強いからだ。実際、英国を代表するSF作家、ブライアン・オールディスがまとめたSF史『十億年の宴 : SF-その起源と歴史』(東京創元社、1980年)では、本作こそが「SFの起源」と名指しされている。 この小説の中で、フランケンシュタインが生み出した怪物は見た目の醜さとは逆に純粋で善良な心をもつ存在として描かれています。そして人間はそんな彼の心を理解できない愚かな存在として描かれています。「人間は科学技術の発展を有効に使いこなせず、それを暴走させてしまうだろう」という実に今日的な問題を、この小説はいち早く取上げていたわけです。そこからは、原子爆弾、原子力発電事故、地球温暖化問題、公害問題、細菌兵器、遺伝子研究・・・様々な問題が見えてきます。こうした科学に対する先見性こそが、この小説を「SFの原点」と言わせることになります。
(中略)
この小説は科学を通して「人間とは何か?」に迫った最初の作品とも言えます。そして、それこそが真のSFと呼びうる最大の特徴でもあります。
論文