像
鼻の長い動物のことではない。
背中に砂をかけるのは虫を追い払うためという動物のことではない。
像はいわば現実にあるものの複製である。(この現実にあるものを『論考』では「事実」という。) 例えば、楽譜は音楽の像である。音楽を紙上に複製している。
絵画もそうである。肖像画は人物の複製であり、風景画は風景の複製である。その点、抽象画は像とは呼べないかもしれない。具象画が像と呼ばれるものである。
写真も現実を切り取るので、像と呼べるだろう。
ジオラマも像であるし、模型も像と呼べる。
ヴィトゲンシュタインは、裁判で事故の検証の際に車の模型を使って、事故を再現したということを知り、この「像」という概念を思いついたようである。
はじめ.icon
光文社古典新訳文庫の『純粋理性批判』では、従来「表象」と訳されていたVorstellungの殆どが「像」と訳されている。