今日の短歌の感想ページ
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今日の短歌に投稿された作品について感想を書くページです! (対象ページに直接書くと他の読み手の解釈を狭めてしまうかなと)
2020/11/22
付箋つく歌は 君好みのもので 歌集が閉じてまぶたもとじる /久住哲
動きの限られた中に自分と「君」との関係が浮き出ている。ここで自分と「君」をつないでいるのは、おそらく貸してもらった「歌集」とそこについている「付箋」だけ。自分は君の好みの歌を付箋から読みとる。雪原の足跡に自分の足を重ねるように。先を行っている君の感じたものを想像しながら歌集とまぶたをとしているのだろうか。ささやかな動きの中に感情が込められている。トーチカ.icon
毛糸玉かたづけコーヒー淹れる背にあずかる体温「これが愛だよ」 / 雨水うい
毛糸のもつ温かさ、コーヒーの温もり、体温、愛情どれもがあったかく心がぽかぽかする歌です。背にあずかる体温をさして「これが愛だよ」と言っているともとれますが、毛糸玉(編み物)やコーヒーを淹れていること、どの句に対しても「それも愛ですね」と言いたくなる歌です。愛という目に見えないものの回答をひとつくれた歌だなと思いますなるせ.icon
秋天に晴れ着の朱が煌めいて成長願い出かける散歩 /島崎みとん
23日の人はなぜふと感傷にひたるのか色違いのトレーナー見るにも表れているように、島崎みとん氏の短歌は色が強調される。秋の空の青色を背景に煌めいている赤色。唐突に視界に入ってくる色の違うトレーナー。それを見ることに込められている願いや気づきを読み取ること。そこに我々と島崎みとん氏との間のコミュニケーションの面白さはあるのかもしれない。トーチカ.icon
バスに乗る夢ばかり見る目覚めたら街には付箋が一枚ついてた / スズキ皐月
街に付箋が一枚つくとは不思議だ。その情景は夢のように曖昧である。しかし、付箋がはられたその街は、目覚めたあとの場所である。現であるはずなのだ。とすると、付箋というものが夢から出てきたもののようにおもわれる。……「バスに乗る/夢ばかり見る」……バスで眠ることはよくある。バスが街を巡るなか、主人公はしきりに夢を見る。その結果、街に付箋がつく。夢と現実とのあいだの連絡。……しかしまた、「バスに乗る夢 ばかり読む」とも読める。バスで夢見ているのか、バスも夢なのか。こういう夢の入れ子構造は同氏の次の短歌にもみてとれるかもしれない。「昼に見た夢の話を聞かせながら作った味噌汁は夢に出そうだ」夢か現か境目が曖昧であり、両世界が交錯し、その両者を含むシュールな空間が感じられて面白い。なのでこの歌の中心は「夢」であるとおもわれる。……いっぽう、また、付箋という言葉がこの歌では浮き上がる。同日投稿された私の作品に「付箋」の字が有り、スズキ皐月さんの短歌はそれより後に書かれた。そういう短歌外状況から察するに、この「付箋」の字は歌集(すなわち、短歌)に関わっているのでないかと想像される。そうだとすると、街に付箋がつくというのは、そこに短歌が生まれているということだろう。街は人の行き交うところ。夢は当人のみ見る世界。その間に、それらを繋ぐものとして、短歌があるようにおもわれる。最後に、似た雰囲気だとおもわれた同氏の短歌を紹介しておく。「ぷかぷかと漏れ出す記憶を塞ぐよう墓石のような目玉がふたつ」てじ.icon
2020/11/23
2020/11/24
2020/11/25
灰の空 松の断崖波砕く カフェ・オ・レ フィナンシェ ラム酒の温度 / 雨水うい
不穏な光景からはじまって、かけ離れたお洒落なおやつタイムへ……対比の飛距離に驚きました。遠いんだけど、リズムと音がいいからでしょうか、すんなり入ってきます。ラム酒の温度は人肌程度かなと想像しました。ざわつきを覚えながら、かすかな温度にしがみついているような…… 映画の導入部のようでもあり、想像が膨らみます。さいほん.icon
2020/11/26
階段の音を殺して歩くようなそういう人生でしたのね。/で電、電で電
階段の上り下りをする際の音を立てないような、そんな物静かで周りに配慮するひっそりとしたそんな人を想っての歌だと思いました。ひっそりとできるだけ目立たないように、誰かに気づかれないようにしていたその人を、作中主体は気づいている。もしかしたら看取っている。とても愛情に溢れた歌だと感じます。物静かさの中にある熱い愛情と、切なさを感じました。すき。なるせ.icon
2020/11/27
2020/11/28
ゆびのはら折れぬ氷柱を分けあって進め溺れよからの方舟 / 雨水うい
すきトーチカ.icon
2020/11/29
教室の虫喰いとばかり親しんで箒はひとり反復横跳び / 雨水うい
すきなるせ.icon
がらくたは「我に楽しみは多い」ってそういう意味だろ そういうことだろ/柳田満
「我に楽しみは多かった」過去形かも……
いやいや!現在形ですね!そういう意味です、そういうことです。涙目の駄目押し、なみだめおしに負けました。さいほん.icon
プールでもあたたかい箇所がありましてそのぬくもりは布団に似てます /久住哲
屋外のプールが思い浮かびました。日溜まりのところがあたたかくなったのかなと。布団と言われるとなるほど、ぬくぬく眠り込みたくなるあたたかさが似ています。実際にプールで眠気に誘われたら溺れて危なそうなところを、やわらかく歌いあげていて好きな一首です。またプールといえば夏―夏といえば暑い―というイメージがありますが、この”ぬくもり”を掬いとる繊細さがいいなぁと思いました。さいほん.icon
2020/12/2
とても優しい人だからポケットの中には粉々のラング・ド・シャ / 嘔吐彗星
すき。音を数えたら31音でビックリした。3回に区切って音読すると、一行詩として心地よいリズム。「優しい人だから」というのと「ポケットの粉々のラングドシャ」がすぐには結びつかないが、……誰かにあげるためにポケットにずっとラングドシャを入れていたら、過ごすうちに粉々になってしまった……と解釈。人を選ばずに贈る準備をしていたが、渡す機会なく過ごした切なさと、粉々になったラング・ド・シャの悲しみが、通じ合っているのか。てじ.icon
2020/12/4
お日様の作る四角に収まってフローリングに溶けるぼくたち/むらさきらでん
すき。なぜか一読して猫が思い浮かんだ。猫と「ぼく」が部屋で昼寝しているイメージが浮かんだ。部屋に差す日光は窓の形に四角になり、床に当たりそこだけ暖かい。冷たいフローリングがちょうど良く温められたときの心地よさがよく分かる歌だ。暮らしのなかのちょっとした幸せがよく表現されている。「ぼくたち」がひらがななのも柔らかな印象で、歌に合っている。素晴らしいとおもう。てじ.icon
2020/12/5
えいえんを上書き保存してしまう ちゃんと♡をつけたのだけど /久住哲
なんかすき。♡をつけておかなくてはね。で電、電で電.icon
2020/12/10
騙し合い互いの舟をさぐりあう敵って誰だ しずめろいかりを / スズキ皐月
しずめろいかりを のダブルミーニングすき。なるせ.icon
2020/12/11
私綺麗?「美しいです」そうですか それならいいの それならいいよ。/むらさきらでん
すき。それならいいの それならいいよ。のかけあいなのか、自分に言い聞かせてるのかそのなぜかわからない納得がとてもいい。この歌自体が、「美しいです」なるせ.icon
2020/12/6
暗闇のなにがそんなにこわいのと嘯(うそぶ)くひとの眼にも暗闇 /久住哲
ブーメランかなあ。皮肉が効いていて良い。リズムも心地良く、ストンと着地できるような感じがする。で電、電で電.icon
2020/12/17
寒空に燻らす煙草がゆらゆらと切なくなってまた口にして/くま子
おそらく季節は冬で、野外で煙草を吸い、吐いた煙がゆらめきながら空に消えてゆくのをみて切なくなり、また煙草を口につける情景が表現されている。そこから更に、また煙を吐いて、また切なくなって……という繰り返しの切なさも思われる。落ち着くために吸う煙草が不安を呼び、その不安を落ち着かせるためにまた煙草を吸うことを繰り返すという切なさである。この二重の切なさが、「切なくなって」という直接的表現と、結句の「て」の余韻とによってきわめて上手く表現されている。繰り返し口に運ぶ煙草は、歌われる内容とも合っている。すばらしい一首だとおもう。てじ.icon