レンブラントの『夜警』
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作者 レンブラント・ファン・レイン
種類 キャンバスに油彩
寸法 363 cm × 437 cm
レンブラントはオランダの国宝と呼ばれており、同時代のフェルメールをも凌ぐオランダ一の画家と言われている
この『夜警』を所蔵するアムステルダム国立美術館には『夜警』専用の部屋があるぐらい評価されている 油絵にはガラスをかけないことがほとんどだが、『夜警』にはガラスケースがかけてあり、厳重に保管されている
夜警とか言ってるけどこの絵は実は昼を描いている
ニスが黒ずんで変色したため夜の情景に見えてしまう
この絵に描かれている人たちはオランダの火縄銃組合(自警団)であり、集団肖像画(記念写真のようなもの)である
レンブラントは、市民隊の隊長バニング・コックと隊員17名の計18名から制作を依頼された
真ん中の黒い服のおじさんがフランス・バニング・コック隊長
その右横の黄色の服を着たおじさんがウィレム・ファン・ラウテンブルフ副隊長
中央左奥にに自警団に似つかわしくない黄色いドレスの少女がいる
中央の隊長と副隊長、そして左奥の少女に光を当てて浮かび上がらせているのがこの絵の特徴でもある
他の隊員には光が当たらず描き方に差がある
黄色いドレスの少女は実在しない女神のような存在として考えて良いだろう。彼女の帯にぶら下がった鶏の爪は火縄銃手(clauweniers)の象徴である。死んだ鶏は打ち倒された敵の象徴でもあり、黄色は勝利の色でもある。鶏の後ろの銃も火縄銃隊を象徴する。また彼女は自警団の盃(ゴブレット)を持っている。彼女の前の人物はオークの葉のあしらわれた兜をかぶっているが、これは火縄銃手の伝統的な主題(モチーフ)である。つまり、少女は火縄銃組合のマスコットキャラクターとしてレンブラントが勝手に書き加えたものである
少女はレンブラントの奥さんに似ているので、奥さんをモデルにしているのではないかと言われている(奥さんはこの絵を描いている途中に亡くなった)
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レンブラントの奥さん(サスキア・ファン・オイレンブルフ)
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夜警の少女のクローズアップ
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レンブラントは奥さんの肖像画や二人でコスプレして着飾った絵なども残しており、相当な愛妻家であったと思われる
余談だがこの『夜警』を描いた後レンブラントの人生は転落していく。夜警の仕事の最中に奥さんが亡くなったこと(子供も三人亡くなっている)や彼の元々の浪費癖も関係しているが、この絵を発注した隊員たちが、支払った額と同じ様な平等さで各人を描かなかったレンブラントに不満を持ち、『夜警』以後の受注減につながったとも言われている。オランダ自体の景気低迷もあり、晩年はすっからかんになって貧民街で絵を描いていた。そもそも奥さんの実家はかなり裕福で財産があり、レンブラントが画家として生計を立てるのにかなり貢献した。レンブラントの奥さんはレンブラントの女神そのものであった。ちなみに晩年の絵もそれはそれでいい
明暗対比によりドラマチックな表情を与えている
光を斜め上から差し込み、群像から三人の人物を浮かび上がらせている
17世紀のバロック美術はルネサンス時代の特徴である静、調和と比較して動、対比という特徴がある ルネサンス→円、静、調和
バロック→楕円、動、対比
明暗対比はレンブラントの必殺技であり、ドラマチックな動きの特徴を与える。「光の画家」「光の魔術師」「光と影の画家」「光と影の魔術師」と呼ばれるレンブラントの真骨頂である
『夜警』は犬が吠えたて、少年が走り回っていたり、各隊員はそれぞれ異なった方向に体を向けたりして多様な表情を見せている。隊員の動きが交錯して画面に躍動感を生み出している。これはバロック美術に特徴的な動の表情が顕著にあらわれている
1715年、それまで掲げられていた火縄銃手組合集会所のホールから、ダム広場のアムステルダム市役所に移された際、『夜警』の上下左右が切り詰められてしまった。これは市役所の部屋の二本の柱の間に絵がきちんと納まるようにはみ出す部分を切り落としたという説が有力である
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17世紀に描かれたヘリット・ルンデンスによる模写がロンドンのナショナル・ギャラリーにあるが、これから元の状態を推測することができる。
観客によって三度も損傷を負っているかわいそうな絵である