リングシュトラーセ様式
「様式」という名は付いているものの、時代を代表する独自の様式があったわけではない。
統一的な様式ではなく、過去から借用された様々な様式によって建てられた。
リングシュトラーセの代表的建造物とその様式
歌劇場 カトロチェント様式
国会議事堂 古典ギリシア様式
ウィーン市庁舎 ベルギー・ゴシック様式
ウィーン大学新校舎 イタリア・ルネサンス様式
ブルク劇場 ルネサンス様式とパリ様式の混合
この時期のウィーンに、これほど無節操に様々な時代の様式が混在することになった背景には、ブルジョワジーの台頭という経済的要因が大きく作用している。ブルジョワ・リベラル派は政治経済の分野では過去との断絶を強調しながら、文化的には貴族のスタイルを模倣し、成金が美術品を収集するように、都市を過去の様式の博物館と化したのである。この世代のブルジョワジーにとって文化や芸術は自分たちの社会的、経済的地位を表す記号にすぎなかった。 こうした金にものを言わせて、過去の文化を踏みにじるやり方を、俗物的な行為だとして批判的にとらえられることも多かった。リングシュトラーセをまがい物であると批評家へルマン・バールは批判している。 しかし多様性と折衷性に満ちた一連の建築群は、排他的なナショナリズムを掲げることができず、多民族共生・多文化共存の方針を打ち出さざるを得なくなった当時のオーストリアの状況も示しており、20世紀末、ポスト・モダニズム思潮の登場以降、再評価の向きもあるようだ。
参考文献