ポスト・クラシカル
2000年代以降に台頭
クラシック音楽の中の新しいジャンル
電子音楽やアンビエント、音響派、ロック(ポストロックなど)からの流れも確認されており、単純にクラシックから派生した音楽ジャンルとは言えない。 概要
ポスト・クラシカルの音楽が台頭し始めたのは、ドイツの超大手クラシック音楽レーベルであるドイツ・グラモフォン(ユニバーサルミュージック)が彼らをプロモーションし始めたことが大きい。伝統的かつ保守的なクラシックレーベルが、新しい時代をリードしうる斬新なクラシック音楽を発信するものとして、ポスト・クラシカルの潮流を後押しし始めたのである。 「ポストクラシカル」という言葉は、マックス・リヒターが自身の音楽について述べたことがその由来だ。彼は雑誌『CDジャーナル』(2015年11月号)の中で以下のように語っている。
「もともと「ポスト・クラシカル」は、マスコミ向けの一種のジョークとして使ったのが最初なんです。当時、マスコミは我々の音楽のことを「ネオ・クラシカル」と呼んでいた。でも、私なんかが“ネオ・クラシカル”と聞くと、プロコフィエフやストラヴィンスキーなど、20世紀前半の新古典主義を連想してしまうんですよ。だから「我々の音楽は新古典主義ではない」という意味で、冗談半分に思いついたのが「ポスト・クラシカル」だったんです」
ポスト・クラシカルの音楽の特徴
ポスト・クラシカルの音楽の特徴として、調性的で構成も非常にシンプルであることが挙げられる。
20世紀以降の無調かつ複雑な構成の、いわゆる前衛的な現代音楽に比べると聴きやすく、馴染みやすい音楽と言えるだろう。
また伝統的なクラシック音楽がアコースティック楽器の響きにこだわるのに対して、ポスト・クラシカルの音楽は積極的に電子音や打ち込み(コンピュータ・プログラミング)を活用している。とはいえ、現代音楽の流れの中にあった、初期の電子音楽のようにエレクトロニクスを使用することに意味を見出すような実験的な試みは見られない。あくまで電子音楽で使用される素材や”音色”や”響き”により音楽の色彩を豊かにするような、補助的な役割に落ち着いているように感じる。
電子音の導入にもあらわれていることだが、ポスト・クラシカルの音楽家はクラシックの伝統的な潮流だけにこだわらず、様々な音楽ジャンル(ジャズ、ロック、民族音楽など)のエッセンスを取り入れることに抵抗がない。
もちろんクラシックの音楽家がクラシック外の音楽要素を取り入れることは過去にもよくあったことだが、外部から取り入れるというよりは、ポスト・クラシカルの音楽家自身が、自分がクラシックの世界の内部のみに立っているとは考えておらず、あまりそこのラインを意識していないのではないだろうか。ポスト・クラシカルと呼ばれる音楽家の経歴を見ると、決してクラシック音楽の教育課程を経た者だけにあらず、ロックやアンビエントミュージックの系譜からたどり着いた音楽家もいる。元々パンクミュージックやハウスミュージックであったヨハン・ヨハンソンの経歴を見ても、それがうかがえる。
マックス・リヒターやヨハンヨハンソンは映画作品のサウンドトラックに積極的に楽曲を提供しており、映画音楽との関連性が高い。いわゆる"ポスト・クラシカル的な音楽”が映画の背景を彩るケースが近年増えており、ハリウッド映画やヨーロッパ映画に限らず、日本でも見受けられる。 ポスト・クラシカルに該当しそうな音楽家一覧
ゴールドムンド
オラフル・アルナルズ
ダスティン・オハロラン
ピーター・ブロデリック
シルヴァン・ショヴォー
haruka nakamura
Akira Kosemura(小瀬村晶)
参考