ポイントオブノーリターン
ポイントオブノーリターン(point of no return)とは「後戻りのできない地点」という意味の言葉である。この言葉がなんとなく好きだ。分かれ道があり、どちらに進めばいいのかわからない。だが、人間は時間が限られているので、正解がわからないままどちらかに決めて歩み出すしかない。そして、片方に決めて歩み出したとしても、「あちらの方が良かったのではないか」「今ならまだ戻れる」「戻ってあちらに進み直すべきなのではないか」、常にこういう迷いに付きまとわれるだろう。しかし、その道を進んで半分くらいが過ぎた頃であろうか。「もう引き戻すことはできない」「この道で行くしかない」もしくはより積極的に「この道で行くんだ」と決意が固まる地点、これがポイントオブノーリターンである。
この話のポイントの一つは、決断が心的な領域のみで行われているわけではないという点である。「歩く」という比喩の場合ならば、身体的動作、それにより自分が位置している場所の変化、このような心的要素以外の外的な要素が関わることで、「決心」という心的な要素が定まるということが生じている。
逆にいえば、外的な要素だけで決まるわけでもない。「ある地点が、その地点ですよ。」と客観的に決まるものでもない。必ずそこに主観的な要素が必要となる。つまり、この概念は心的要素と外的要素が合わさることにより、機能する概念だと言うことができる。意外とこういう概念は多いのかもしれない。
そして、人生はいつもポイントオブノーリターンなのかもしれない。
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