ブリグリの話
the brilliant green - Hello Another Way -それぞれの場所-
今になって川瀬智子の才能にうたれる。ブリグリといえば、デビュー曲であるThere will be love thereとか、冷たい花、そのスピードで、エンジェルソングとか有名所はもっとあるけれど、実はこの曲がすごく良い。「中だるみの時期に、もう一度良い曲を、と気合を入れて作った」という話があるようで、それが表現されていると思う。バンドの中での再出発というテーマはあって、ミスチルでいうと、シーソーゲームやニシエヒガシエがそれに当たるんだけど、ブリグリにとってはこの曲がそれに当たるんじゃないかな。ただ再出発といえば、やはりオープニングテーマのようになると思うけど、シーソーゲームなんかはまさにそうで、ただブリグリの場合、デビュー曲がどちらかというとエンディングテーマのようだったから、再出発もこういう曲になるのは彼ららしいところで。この時期にもう一度、There will be love there-愛のある場所-を作ったんじゃないかなという気がする。両者とも同じようなサブタイトルの入れ方をしているのは偶然じゃない気がする。愛のある場所とそれぞれの場所。デビュー曲へのアンサーソングとも言えるのか。再出発といえば、ラルクの再出発は『虹』なんだけど、この曲もエンディングテーマ感があるのも面白いところ。ニシエヒガシエは、前は向いているんだけど、やさぐれながらもやっていくしかねぇだろという感じがあるのが面白い。
『There will be love there』は「will」という言葉からもわかるように未来形の愛を描いている。「そこに愛があるだろう」。未来形の愛って考えると不思議な部分があって、普通恋愛ものでわかりやすいのは現在形なわけで、現在形の恋愛といえば、倖田來未、西野カナ、大塚愛、aikoなど色々といるわけだけど、過去に未来形の恋愛を歌ってきた人がいて、それが小沢健二なんだよね。『ラブリー』や『ブギウギ通り』などに如実にそれが現れていて、今いる恋人ではなくて未来にいるであろう恋人のことを歌っていて、これはよく聞かないとスルーしちゃうところでもあるんだけど、未来形の恋人ってなかなかぶっ飛んでるなというところがあるわけで。『There will be love there』の方は恋愛というよりも普遍的な愛という所もありそうではあるけど。一方の『Hello Another Way』の方はどちらかというと別れの歌で、でも「Hello」という言葉からわかるように悲しい別れではなく前向きな別れであり、「でも今はそばにいて」という言葉からも、はっきりした「別れ」でもない所がある。これはいわば過去形の恋愛なんだよね。それではブリグリの中に現在形の恋愛の歌があるのかというとわからないんだけど、現在形の恋愛の歌ってよくも悪くも生々しくなるから、川瀬と合わない感じもあり、だから川瀬が愛の歌を作ると、現在形を避けて未来形や過去形になる必然性があるのかなと思う。