フェルナンド・ペソア
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フェルナンド・アントニオ・ノゲイラ・ペソア(Fernando António Nogueira Pessoa、1888年6月13日 - 1935年11月30日) ポルトガルの国民的作家として著名である。1988年に発行された100エスクード紙幣に肖像が印刷されていた。
リスボン生まれ。5歳のときに父親が結核で亡くなり、母親が南アフリカの領事と再婚したため、ダーバンに移る。ダーバンとケープタウンで英語による教育を受ける。17歳でポルトガルに戻り、リスボン大学で学ぶがのちに中退。祖母の遺産で出版社を興すが失敗し、貿易会社でビジネスレターを書くことで生計を立てた。
1915年に詩誌「オルフェウ」創刊に参加。わずか2号に終わるものの、ポルトガルのモダニズム運動の中心となった。生前はほぼ無名であったが、死後にトランクいっぱいの膨大な遺稿が発見され、脚光を浴びるようになった。
ペソアの多くの作品は未完である。ほとんどが詩やアフォリズム形式による散文の断片であり、彼の本はその大量の遺稿から編集されて出版されている。
イタリアの作家アントニオ・タブッキがペソア研究、評論や翻訳を積極的に行なっている。
作風
ペソアの作品はサウダーデ(郷愁、憧憬、思慕、切なさ、などの意味合いを持つ、ポルトガル語)、虚構、異名の概念が核をなす。詩や散文の断片。
彼は自分とは異なる人格とエクリチュール(書き言葉)を持った数人の異名者を創造した。これはペンネームや偽名を使うなどということではなく、複数の人格(名称、身体的特徴、人格、経歴、思想、作風)を操り、執筆していった。異名による作品は作家の人格の外にある。
架空の詩人たち
アルベルト・カエイロ、リカルド・レイス、アルヴァロ・デ・カンポス、ベルナルド・ソアレス他
研究者によれば、ペソアの異名は70にものぼるという。
孤独な環境で育った彼は幼い頃から自分の分身に囲まれていたらしい。
彼の試みは単に様々なスタイルによって詩を書くのみならず、複数の異名者たちによって<幕間劇の虚構>と呼ばれる一つの劇的空間を創り出すことだった。
例えば三人の異名者がそれぞれ一種のドラマを成しており、それと同時に三人が全体としてさらに別のドラマを成す。
個々の詩作品をそれとして読むだけでなく、異名詩人を配した新たな詩空間をメタレベルにおいて読解することが求められる。
ペソアの意図
なぜこのような世界観を作り出したのか。彼の意図は、キリスト教世界観や、同一性の幻想から脱出することにあった。
複数の人格、たくさんの異名者(演者)をペソア自身がなりすまし、メタ的に演出。
近代という物語を解体し、他者=複数者になる可能性を探っていたと見られている。
ふりをするもの、虚構
詩人はふりをするものだ
そのふりは完璧すぎて
ほんとうに感じている
苦痛のふりまでしてしまう
いったい、この劇場なき芝居はいつ終わるのか。あるいは芝居なき劇場は。私はいつ家に帰れるのだろうか。どこに、どうやって、いつ。
いまの私は、まちがった私で、なるべき私にならなかったのだ。まとった衣装がまちがっていたのだ。別人とまちがわれたのに、否定しなかったので、自分を見失ったのだ。後になって仮面をはずそうとしたが、そのときにはもう顔にはりついていた
新編 不穏の書、断章より引用
日本語で読める作品
ポルトガルの海―フェルナンド・ペソア詩選 (彩流社)
ペソアと歩くリスボン (彩流社)
不穏の書、断章 (思潮社)
不安の書 (新思索社)
フェルナンド・ペソア短編集 アナーキストの銀行家(彩流社)
不安の書【増補版】(彩流社)←多分これがいちばん内容充実してます