ハーバーマス
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ユルゲン・ハーバーマス(Jürgen Habermas)はドイツの哲学者、社会学者。フランクフルト学派第二世代に位置。 略歴
1929年6月18日、ドイツ、デュッセルドルフに生まれる。父が商工会議所の会頭を努めていたグマースバッハで育つ。1945年5月のドイツの無条件降伏時、ハーバーマスは当時15歳。前述の父はナチ支持者で、ハーバーマス自身も第ニ次大戦中は高射砲部隊の補助隊員を務めており、ヒトラー・ユーゲントにも所属していた過去を持つ。
ハーバーマス自身はドイツの無条件降伏を「解放」と感じ、今こそドイツに精神的な改革が起こるだろうと期待したらしい。
若きハーバーマスは、大学入学前からマルクスの著書を貪るように読んだそうだ。
ハーバーマスは1949年から54年までゲッティンゲン、チューリッヒ、ボンの各大学で哲学、心理学、ドイツ文学、経済学を修めた。ハーバーマスが指導を受けた哲学教授には、主にエーリッヒ・ロータッカー、オスカー・ベッカーがいる。自分の師事した教授連がほぼ全員かつてのナチ・シンパもしくはナチ政権に順応して活動していた哲学者だった環境に、政治的に敏感なハーバーマスはしだいに苛立ちを強めていった。 ハーバーマスは1954年、25歳になる年にボン大学で哲学の学位を取得し、博士論文「歴史の内なる絶対者──シェリング『世代』哲学の一研究」を提出。タイトルを変更し同年公刊している。
ハーバーマスはひんぱんに『フランクフルト・アルゲマイネ』紙という新聞に寄稿していた。
1964年、フランクフルト大学教授に就任。ホルクハイマーの講座を継ぐ。
思想
ハーバーマスのフロイト理論の受容は、主にミッチャーリッヒの自我心理学的解釈に支えられており、またアルフレート・ロレンツァーの言語病理学に多くを負っている。ハーバーマスの精神分析理論の受け止め方は、フランスで支配的だったそれとは異質である。当時フランスで支配的だったラカンが受容されなかった理由として、ドイツではそのような土壌がほとんどなく、それが全く希薄だったから、というのが考えられる。 またハーバーマスは、後期ウィトゲンシュタインと、オースティンらの言語行為論に大きな影響を受けている。 ポパーとの論争
実証主義論争は、ハーバーマスのハイデルベルク赴任の直前、1961年10月に、テュービンゲンで開かれたドイツ社会学会の研究集会で、ポパーとアドルノとが「社会科学の論理」についてそれぞれ報告を行ったことに由来する。その後、ハーバーマスがその討論への補足として「分析的科学論と弁証法」(1963年)を発表した。これに伴い、ポパーの懐刀と言って良いハンス・アルバートが論文「全体的理性の神話」(1964年)でハーバーマスを批判。さらにこれに、ハーバーマスは同年同じ雑誌に「実証主義に二分された合理主義」を発表し、再反論した。
ルーマンとの論争
『後期資本主義の正統化の諸問題』刊行(もしくは『後期資本主義の正統化の問題』)に時間的に先立って、60年代から70年代にニクラス・ルーマンとの論争が起きている。発端となったのは、1968年フランクフルトで開かれたドイツ社会学会で、ルーマンが「全体社会の分析の形式としての現代システム論」と題する報告を行ったことである。この報告とそれに対するハーバーマスの反論は、共著『社会理論か社会テクノロジーか──システム研究は何をなすか』として1971年に発表された。この場合は社会理論をハーバーマスが、社会テクノロジーをルーマンが代表する形となっている。
書籍
・『絶対者と歴史──シェリングの思考の内的矛盾について』(初版1954年)
ボン大学での博士論文「歴史の内なる超越者──シェリング『世代』哲学の一研究」をもとに刊行されたもの。
・『公共性の構造転換──市民社会の一カテゴリーの研究』(初版1962年、新版1990年、邦訳1994年)
ハーバーマスが1961年にマールブルク大学に提出した教授資格論文をもとに、カント、ヘーゲル、マルクスにおける公共性論についての若干の叙述を追加して62年に刊行された初期ハーバーマスの主著。
・『哲学的・政治的プロフィール』(初版1971年、増補版1981年、邦訳1984-86年)
・『後期資本主義における正統化の諸問題』(初版1973年)
・『コミュニケーション的行為の理論』(初版1981年、邦訳1985-87年)
・『新たな不透明性──政治小論集Ⅴ』(初版1985年、邦訳1995年)
・『事実性と妥当性──法・権利と民主主義的法治国家とに関する討議理論への寄与』(初版1992年、邦訳2002-03年)
以上の内容は、中岡成文『増補 ハーバーマス』(ちくま学芸文庫)第1章の1「第三帝国の闇が明けて」に詳しい。