ドン・キホーテの旅(一回目)
下級貴族ドン・キホーテは騎士道小説の読み過ぎで自分が世界最高の騎士であると思い込む。 ドン・キホーテは生涯で三度の遍歴の旅に出る。一度目は一人旅だ。
一度目の旅程は短い。
彼は道ゆく人にドゥルシネア姫の美しさを讃えろと迫る。ドゥルシネア姫とは彼が造り上げた空想の想い人だ。彼は通りすがりの商人を脅す。商人はドゥルシネアを見たいと願う。実際に美しさを確認すれば信じるという。たとえどんなに醜かろうと現実に見さえすれば美しいと認めるという。ドン・キホーテは激怒する。ドゥルシネアは絶対的に美しい。何より大事なのは彼女を見ずして美しいと認めることだ。彼は商人に襲いかかる。一度目の旅のドン・キホーテに暴力の躊躇はまったくない。彼は騎士道にもとる相手を容赦なくぶちのめす。しかし攻撃は避けられ彼はぶちのめされる。
彼は痛みにうめきながら騎士道物語の台詞を語る。瀕死の怪我を負った騎士が助けを求める場面だ。そこにたまたま農夫が現れて彼を介抱してやる。彼は農夫と騎士道物語の台詞で対話する。「わしは自分が何者であるか、よく存じておる」と彼はいう。わしは十二英傑や九勇士の全員になれる。彼らの武勲を全部合わせてもわしのそれには及ばない。一度目の旅の彼はしばしば自分と伝説の騎士を混同する。 農夫に連れられて村に帰ったドン・キホーテは深い眠りにつく。その間に友人たちがこれ以上彼が狂わないよう彼の蔵書を全て隠すか燃やしてしまう。目が覚めた彼は書物がないことに気づく。家の者は悪い魔法使いの仕業だと彼にいう。彼がこの後自分と伝説の騎士を混同することはない。
彼は急に旅の従者を求める。秘かにサンチョ・パンサという農夫を説得する。サンチョはドン・キホーテが武勲をあげた暁には島の領主にしてやるという誘惑に乗る。サンチョは諺が好きなよくしゃべる男だ。彼は読み書きができない。彼はドン・キホーテのいうことを信じもすれば疑いもする。ドン・キホーテも彼の言動に幻滅もすれば感心もする。 二度目と三度目の旅にドン・キホーテはサンチョ・パンサを従者として連れていく。