デヴィッド・クローネンバーグ『裸のランチ』感想
⚠️虫が苦手な人は見ない方がいい
https://youtu.be/_bgrNm7rdeo?si=oxdXz9H8VbmD9lL0
実はあんまし期待してなかったんだけど、面白いなこれ
ちなみにこれ、バロウズの小説の映画化ではないと思うので、その向きで見られた方はがっかりするかもしれない
バロウズの原作小説『裸のランチ』を映画化した場合、映像の感覚や時系列が分裂的で何がどうなっているのかよくわからない状態を再現するのが筋だと思うがそういう形式にはなっていない。そうなっているという意見も見るが私の見た感じだとそうではない。ただシュールではあるよ。クローネンバーグは物語の文脈が結構しっかりした作家であり、偶然性だとかそういった類のものは利用していない
じゃあどういう映画なのかというと、クローネンバーグがバロウズの世界観を分析した内容もしくは自己のバロウズ像(もしくはバロウズを引用したクローネンバーグのインナーワールド)を実現したような形の映画になっている。これが結構面白くて、たぶんクローネンバーグはたぶん精神分析だとかその辺も通過してそうな作家なんだけれども、彼がバロウズを読んでバロウズ自体を分析して、つまり自分の中でバロウズとは何かということを愛を表現したような映画なんだろう
クローネンバーグはバロウズのゲイ嗜好を隠れ蓑みたいに表現しておりクローネンバーグなりの解釈を加えているが、奥さんを撃ち殺すのはバロウズ(クローネンバーグ)内の女性性を排除するとか女性をラスボスみたいな女性の内臓に実は男性が隠れていたり男性の女性性を意識したりしてるのだがこれを全男性の女性性の排除の欲望を表現していると解釈すると間違いに至るので注意したい。ジーンは全女性の代表でもなんでもないのだから...これは政治的なものとは無関係でありあくまでクローネンバーグのファンタジーの話であり、彼の中で虫が湧き出てきたり女性を攻撃するというファンタジーがあるのだ、みたいな話をクローネンバーグ自身がしているようだ。この辺の話も興味あるなり
そういえば虫が出てくるが、虫自体がバロウズ(クローネンバーグ)のインナーワールドであり虫の言ってることはバロウズ自身の心理である。カフカの『変身』の虫化はグレゴールの遺志によるもので、彼の無意識的なストライキであるみたいなリクトー氏の解釈があるが、『裸のランチ』の南京虫の下りとカフカをくっつけた感じだろうか。 その辺の話を抜きにしても、虫とタイプライターが合体してあるとか虫が性器を形態してるとかそういう世界観に度肝抜かれること請け合いで、そういう類のものが好きな人には是非おすすめしたい。