ダダとパンクの共通点
「ダダとパンクの共通点は『脱神秘化(dematerialization)』です。この言葉は、美術批評家のルーシー・リパード(Lucy Lippard)が『芸術の非物質化(The Dematerialization of Art)』(1968年)で使っています。ヴァルター・ベンヤミン(Walter Benjamin)は『複製技術時代の芸術』(1936年)で、写真や映画といった複製技術ができるまで美術は権威的なアウラをまとっていたが、それが生まれたことで、アートはもっと身近なものになったと書きました。それは悲しむべきことではなくて、ナチスがプロパガンダとして政治の美学化をして国民を洗脳しようとするなら、それを逆手に取って使えばいいと主張しました。そのことは現代アートの世界に今でも影響を与えています。 たとえば、脱神秘化を表現の手段としたベルリン・ダダは、政治性を持った『コラージュ』『モンタージュ』を制作しました。コラージュは複製が簡単で、作家の痕跡であったり一点ものといったものではなく、既存のイメージを切り貼りして制作するものです。今回展示した、ジョン・ハートフィールド(John Heartfield)は、ナチスに殺されそうになりながらも、ナチス批判をコラージュで繰り返しました。そして、コラージュは、のちのパンクファッションや、アルバムのスリーブワークにもよく使われる手法になりました」