キャノン(聖典)
聖書の外典に対して、公認された正典を表す語。転じて、標準、規準を意味するようになった。現代文芸批評では、アカデミズム、教育機関等において、偉大な、学ぶに値するとして権威づけられた文学作品を指す。 文芸批評史では1970年代以降からキャノンの見直しが進んでいる。
従来の文学伝統は、キャノン(canon)、つまり文学的な正典として権威づけられた作品によって構成されていた。しかし、キャノンを形成してきたのは、一部の特権者、つまり白人男性のエリート集団にかぎられ、その集団に属さない者──たとえば女性、同性愛者、有色人種、労働者階級など──の文学は、周縁に押しやられ軽視されてきた。このような反省のもとに、キャノンの見直しと拡大の方向へと向かうようになったのである。