『金閣寺』の主人公は『サロメ』に酷似している?
宮本亜門は「『サロメ』によせて」の中で、三島由紀夫の『金閣寺』の演出をしている中で、その主人公の溝口がサロメに酷似していることに気がついたという。 特殊な環境の中で育ち、ある意味の純真無垢で実直な考えを持ちながら思春期を迎えた二人が、物語の始まりと終わりとでは、とてつもなく大きな変化をし、サロメはヨカナーンの首を斬らせ、溝口は金閣を焼きます。世間からみると許されない犯罪行為が、彼らにとっては気づきと達成、成長を意味しているのです。やはり三島の『金閣寺』は、オスカー・ワイルドの『サロメ』から影響を受けていたのでしょうか。そう考えると、今まで自分が固定観念として持っていた退廃的なサロメのイメージが、かえってサロメの本質を欠落させていたのではないかと疑うようになったのです。
三島由紀夫は1960年と1971年に日野耿之介の訳本を台本として『サロメ』の演出を手がけている。 後者の公演は三島が割腹自殺をしたため追悼公演となった。
また三島は若年時にワイルドに傾倒しており、優れたワイルド論を残してもいる。
彼自身、ワイルドと同様に同性愛者だった。
三島由紀夫の『金閣寺』がワイルドの『サロメ』に影響を受けている可能性は大いにありえる。