『金色の死』
谷崎潤一郎の短編小説。谷崎潤一郎が最も嫌った作品であり、谷崎自身の手で全集から取り除かれていたが、三島由紀夫が復活させたとされている。 三島由紀夫の生き方にも影響を与えたとされており、三島は「金色の死」について、「官能的創造の極致は自己の美的な死にしかない。この作品を否定した谷崎は、決して自殺をしないだろう」と語ったらしい(金色の死 谷崎潤一郎のユートピア小説について)。 /icons/hr.icon
イタローさんに誘われて読んだ。たしか作品の主題となる岡村君が余りある財産を使って自身の宮殿(芸術、ユートピア)を作り上げて、幸福のままに酒を飲んで踊り狂って死ぬんじゃなかったかな(死因は全身に金箔を塗りたくったため皮膚呼吸できずに死亡)。羨ましい死に方だと思った記憶。
私は此のくらい美しい人間の死体を見た事がありませんでした。此のくらい明るい、此のくらい荘厳な、「悲哀」の陰影の少しも交らない人間の死を見た事がありませんでした。
岡村君はたしかに幸福な人間でした。何故なぜかと云うのに、彼は自己の全力、全身を挙げて自己の芸術の為めに尽し、而も十分な成功を遂げたからです。世の中には彼よりも多くの財産を持ち、多くの学識を持った人は沢山あるでしょう。然しながら古来彼程真面目に、彼程単一に、自己の芸術の為めに突進した者はないと云ってもいゝでしょう。