『論考』からの第一歩
『哲学的考察』を読んでいて改めて感じているのだが、ヴィトゲンシュタインが『論理哲学論考』の世界観から抜け出す哲学上の第一歩となるきっかけは「色」についての考察である。(私生活のきっかけはまた別にいくつかある)色というのはそれに固有の性質を備えている。人間の思考の関係のない所で色固有の性質がある。色相環という色の関係性を表した図があるのだが、これにおける色の関係性というものは、人間には関係のない所で客観的に定まっており、人が勝手に位置を変えることはできない。ここに人間の思考が入り込む余地は無い。ヴィトゲンシュタインは『論考』においては、いわば思考の無法地帯とでも呼べるような、全く自由な思考を展開していた。しかし、色を考えることにより、自分の思考ではどうにもならない、外的な制約を考慮しなくてはならなくなったのである。この外的な制約が、後の数学の考察や規則の考察に繋がっていくものと考えられる。 はじめ.icon