『美徳のよろめき』
『美徳のよろめき』(びとくのよろめき)は、三島由紀夫の長編小説。全20節から成る。人妻の姦通(婚姻外の恋愛)を描いた作品で、多くの大衆読者を獲得した作品である。結婚前の男友達と再会し関係を持ち、官能に目覚めたヒロインが妊娠・中絶を繰り返した苦しみの末に、別れを決心するまでの1年間を描いた物語。フランスの心理小説の趣を生かした文体で、ヒロインの背徳を優雅に表現している。「よろめき」という言葉は流行語になり、「よろめき夫人」「よろめきドラマ」という言葉が流行った。 1957年(昭和32年)、文芸雑誌『群像』4月号から6月号に連載された。単行本は同年6月20日に大日本雄弁会講談社より刊行され、30万部のベストセラーとなった。同年9月15日には、限定版『美徳のよろめき』も刊行され、10月29日には月丘夢路主演で映画も封切られた。文庫版は1960年(昭和35年)11月5日に新潮文庫で刊行された。翻訳版は中国(中題:美徳的動揺)、イタリア(伊題:Una virtù vacillante)で行われている。