『罪と罰』読書メモ(はじめ)
1 金貸しの老婆
金貸しの老婆の良心(火の灯った聖像)
2 マルメラードフ
マルメラードフのさげすみ(酒場の人たちに対する、もしくはある種類の人間一般に対する)
マルメラードフのどうしようもなさ
(仕事に復帰したのに自ら投げ捨てる、家に残っていたお金も持ち逃げして酒に費やす、せっかく仕立てた正装もぼろぼろにする)
奥さんに引きずられるマルメラードフ「これが、う、うれしーんだよ、学生さん。」
マルメラードフの家の窓にそっと1ルーブリを置くラスコーリニコフ
3 母からの手紙
母と妹の新生活への期待とラスコーリニコフへの愛情
手紙に対するラスコーリニコフのアンヴィバレントな感情(涙と冷笑)
4 ラスコーリニコフの憤り、ボロボロの少女、ラスコーリニコフの豹変
母と妹の決定に対するラスコーリニコフの怒り
ラスコーリニコフが少女に対する態度を急変させる
ラズミーヒンという友人
ラズミーヒンは失敗を気にしない
5 ラスコーリニコフが犯人だとバレそうなフラグをちょいちょい挟む
単純にエンターテインメント性としてドストエフスキーが上手い
普通は読者はラスコーリニコフに感情移入してるわけだからシンプルにハラハラさせる
6 世話を焼きたがるラズミーヒンと一人になりたいラスコーリニコフ
7 定型文の牧師とそれを打破するマルメラードフの奥さん
8 ラスコーリニコフとルルーシュ(コードギアス)の共通点
妹がいて、その存在が自分にとって人生の重要なファクターとなっているという点
思考が優位であるという点
何か出来事があるたびに、自分の解釈が頭の中を駆け巡る
コミュニケーションで演技をするという点
相手に及ぼす効果などを狙って「ふり」をする
そして腹の中では別なことを考えている
この点、ラズミーヒンは裏表がない。
自分の理想を実現するためには、他人がある程度犠牲になることは仕方ないと考えている
イケメンであるということ
9 ラスコーリニコフの魂が救済されることはないだろう
なぜなら、人を殺してしまったから
だが、全ての殺人で救済がありえないわけではない。やむを得ない殺人もあるだろう。しかし、ラスコーリニコフの場合はそうではない。必ずそれを悔やむ瞬間が来る。そしてそこから逃れることはもうできない。それはラスコー二コフがある面で正常だからである。それは良心を持っているからと言うこともできる。彼に良心がある限り、彼の魂が救われることはない。だが、これはなんということだろう。完全な悪人になれば、救われるということになってしまうではないか。
苦しむことこそが必要であり、救いなのであるという考えを導入すると、このパラドックスは解消される。
この点、わら人形に釘を打ち付けるなどに代表される「呪い」という文化の高尚さがうかがわれる。なぜなら呪いであれば、実際に人を殺さなくて済むからである。ただこの場合の動機は恨みなどであり、ラスコーリニコフの思想殺人とはまた別ではあるのだが。だが思想殺人ほど、罪深い救われない殺人もないのではないか。まだ恨みによる殺人の方がましな気もする。それは当人の心の中においてもそうで、恨みによる殺人の方が救われようがあるということもある。なぜなら思想は持続力が弱いからである。ある思想はいずれ衰退していく。思想が衰退しても、人を殺した事実は変わらない。ここに救われなさがある。
人を殺すと考えることと実際に人を殺してしまうこと、ここに決定的な差がある。