『玉勝間』
たまがつま たまかつま
14巻で目録が1巻。1793年(寛政5年)より起稿し、1801年(享和元年)までの記事を載せ、推敲を重ねて完成した後、1795年(寛政7年)から1812年(文化9年)の間に、3巻ずつ刊行された。文章はよく推敲された和文である。書名は「捨てるには惜しい物を籠に集めておく」という意味で命名された。各巻には植物に因む巻名と巻頭歌がある。 宣長が古典研究で得た知識を収録し、有職故実や語源の考証、談話・聞書抄録など多様の分野にわたる学問・思想についての見解を述べたもので、とりわけ契沖や賀茂真淵への言及、自己の学問形成、漢意への批判などが知られている。いわゆる近世随筆と呼ばれるジャンルは、個人的な感想を述べる現代の随筆と違って考証や抜書が多く、自身の感想や意見を述べることは少ないが、本書はそれらが読み物としてバランス良く配列してある。また「葬礼婚礼など、ことに田舎には古く面白き事多し」とあるなど、民俗的視点をも備えている。