『新しい人』のイーヨーの発言集
p20
――いいえ、いいえ、パパは死んでしまいました!
p21
――いいえ、パパは死んでしまいました! 死んでしまいましたよ!
――そうですか、来週の日曜日に帰ってきますか? そのときは帰ってきても、いまパパは死んでしまいました、パパは死んでしまいましたよ!
p22
――足、大丈夫か? 善い足、善い足! 足、大丈夫か? 痛風、大丈夫か? 善い足、善い足!
――ああ、大丈夫ですか、善い足ですねえ! 本当に、立派な足です!
p26
――善い足、大丈夫か? 本当に善い足ですねえ!
p67
――あーっ、死んでしまいました、あの人は死んでしまった!
p69
――大丈夫ですよ! 僕は死ぬから! 僕はすぐに死にますから、大丈夫ですよ!
p70
――僕はすぐ死にますよ! 発作がおこりましたからね! 大丈夫ですよ。僕は死にますから!
p72
――ああ! 今朝もまた、こんなに死んでしまいました! 急性肺炎、八十九歳、心臓発作、六十九歳、気管支肺炎、八十三歳、ああ! この方はフグ中毒研究の元祖でございました! 動脈血栓、七十四歳、肺癌、八十六歳、ああ! またこんなに死んでしまいました!
――ああ! 日暮里商店街御一行の皆さんが、弁当で中毒されました! お茶屋弁当でした!
p73
――ああ! 心臓の音が少しも聞えません! 僕は死ぬと思います! 心臓が音をたてていませんから!
p74
――あの頃は、面白かったですよ! 昔は面白かった!
p78
――大変苦しかったが、がんばりました!
ホーッ、ふたつも、僕の脳が!
――そうなんですよ! 僕には脳がふたつもありました! しかし、いまはひとつです。ママ、僕のもうひとつの脳、どこへ行ったんでしょうね?
――そうですね、すごかったものだなあ!
p79
――「オー・ソレ・ミオ」を作曲いたしました!
――ありがとうございました、がんばらせていただきます!
p85
――はい、そういたしましょう!
p102
――いいえ、すっかりなおりましたよ!
僕は沈みました。これからは泳ぐことにしよう。僕はもう泳ごうと思います!
p106
――本当に背の低い人でしたよ、これくらいの人間でした!
p114
――あーっ、それは難しいです、僕は忘れてしまいました!
――音楽ですか? えーと、モツアルトには「夢の像」という歌曲がございます。K五五三ですけど、あーっ、残念なことに、僕は聴いたことがありません。失礼いたしました!
――もういいよ、やめましょう!
p135
――さあ、まいりましょう、僕は伊豆の家へまいろうと思います!
――いいえ、僕は伊豆へまいろうと思います!
p136
――いいえ、パパは死んでしまいました! 死んでしまいましたよ! 僕はひとりで伊豆へまいろうと思います! パパは死んだのですから! みなさん、ご機嫌よう、さようなら!
p137
――僕は冬のセーターを持っています! 僕は伊豆半島が流れてしまわないうち、到着すればいいと思います! 台風がくるそうですから!
p149
――大丈夫ですよ、大丈夫ですよ! 夢だから、夢を見ているんですから! なんにも、ぜんぜん、恐くありません! 夢ですから!
p154
――大丈夫ですよ、大丈夫ですよ! 夢だから、
夢を見ているんですから! なんにも、ぜんぜん、恐くありません! 夢ですから!
p171
――ありがとうございました!
――ありがとうございました!
p172
――ありがとうございました!
――ありがとうございました!
p180
――これがいいです!
P186
――ああーっ、大きい足です! 立派な足ですね! これはパパの足でしょうか? このように長い話では、僕にはなかなか作曲できません。これは大作ですねえ! 難しいですねえ! 僕にはむりなようです! 僕はなにもかも忘れてしまいますから!
p191
――あーっ、びっくりいたしました、これは困りました。ママ、どういたしましょう?
p192
――よくわかりました! 演奏家が繰りかえしをはぶいて演奏する場合がございます、えーと、グレン・グルド、またモノラルではリパッティがそういたしました! p193
――シーッ、さあ、皆さん、お聴き下さい!
p196
――僕は足のなかにいようと思います、ありがとうございました!
――カーテン・コールは、はじめの悲しい合唱を歌います! つづいて元気よく、最後の合唱へまいりましょう! その後は、「きよし、この夜」! 父兄の皆さんも御一緒に!
p201
――ああ、残念でした、この箸は頭の部分が欠けております!
p227
――あーっ、作業所建設に反対ですか! これは、困りました!
――もういいよ! 止めましょう!
p239
――なにかな、なにをいってるのかな? この番号は「音楽の冗談」、ヘ長調ですけど、なにかな!
p250
――ウム!
――はい、はい!……そうです、僕です。……はい、はい!
あなたは悪い人です! どうして笑っているのか? もう話すことはできない! ぜんぜん、なんにもできません!
p251
――僕はずっと覚えていました! あの人は悪い人でした! しかし、ママ、心配はいりません! もう僕は怒らないですよ! もう悪い人はぜんぜんいませんから!
p266
――寄宿舎に入る順番になりました! 準備はできておりますか? 来週の水曜日に入ることになっております!
しかし僕がいない間、パパは大丈夫でしょうか? パパはこのピンチを、またよく切りぬけるでしょうか?
P267
――それはHさんが、白血病で亡くなった時でした! サクちゃんは、小児癌だったし! ああ、恐しかったものだなあ! パパはよく切りぬけました! ご苦労さまでした! 三年前の、一月二十五日の、一週間のピンチでございました!
p270
――そうです、そのとおりですよ! ありがとうございました!
――いやあ、まいりました! 本当にまいりました!
p286
――パパ、よく眠れませんか? 僕がいなくなっても、眠れるかな? 元気をだして眠っていただきます!
p306
――善い足、善い足、大丈夫だったか? お元気でしたか?
p307
――寄宿舎では、お茶がでないと申しましたが、お茶はありました! はとむぎ茶でございました!
p308
――イーヨーは、そちらへまいりません! イーヨーは、もう居ないのですから、ぜんぜん、イーヨーはみんなの所へ行くことはできません!
p309
――はい、そういたしましょう! ありがとうございました!