『ゼロから始めるジャック・ラカン』改訂箇所
単行本では「学派分析家」への言及はなかったが、文庫本にはある 〈他者〉→《他者》と表記が変わっている
第4章の「〈法〉・《他者》・言語」が加筆されている
幼児の言語習得が受動的な状態から始まりやがて能動的になる という点が強調されている 第5章の「要請なくして生はなし」の部分
幼児が他者がいなければ生きていかれない状況が「寄る辺なさ」と用語化されている(184頁)
「幼児の中に言語が刻みつけられる」という「刻みつける」という表現が採用されている(185頁)
元々の単行本には「刻む」という表現はない(111頁)いや、ある。
単行本p112の「根源的な不安」が文庫本p188では「根源的な懸念」となっている
p186あたりから大幅な加筆があり、それに伴い小見出しの変更がある
table:単行本と文庫本の比較
単行本 文庫本
要請なくして生はなし 要請なくして生はなし
現実的欲求と象徴的要請のギャップ 〈欲求の満足のための要請〉から〈愛の要請〉へ
愛とは持っていないものを与えることである
欲望は他のものを目指す 欲望は他のものを目指す
欲望の(不可能な)満足に向けて
欲望は要請の彼方に 欲望は要請の狭間に
それに伴い、文庫本p193では「欲望の見せかけの対象」という言葉が出てくる。
単行本で「見せかけ」が術語として出てきたのはたしか第6章からだったと思うが、これは定かではない久住哲.icon
p196で「神経症者は欲望を要請へ還元する」というラカンの言葉が紹介されるが、単行本にはこの言葉はない
患者が分析家のトイレを借りるという単行本p115にある印象的な挿話が文庫本では削られている
p198でfrustrationというフランス語の意味の説明が追加されている
仮装の話がアンコール3から第5章本文に移されている。その際に、「性別化」の話として本流に組み込まれている。
それに伴いアンコール3のタイトルが「女性のエディプス・コンプレクスについて」から「エディプス・コンプレクスは、今日?」に変わっており、内容も変わっている。
文庫本のアンコール3には、単行本のときにはなかった「古名の戦略」という言葉の紹介がある