『1Q84』
BOOK1~3まである
執筆の動機と背景
執筆の動機として、ジョージ・オーウェルの近未来小説『1984年』を土台に、近過去の小説を書きたいと以前から思っていたが、それとは別に、地下鉄サリン事件について『アンダーグラウンド』と『約束された場所で』に書いた後も、裁判の傍聴を続け、事件で一番多い8人を殺し逃亡した、林泰男死刑囚に強い関心を持ち、「ごく普通の、犯罪者性人格でもない人間がいろんな流れのままに重い罪を犯し、気がついたときにはいつ命が奪われるかわからない死刑囚になっていた——そんな月の裏側に一人残されていたような恐怖」の意味を自分のことのように想像しながら何年も考え続けたことが出発点となった。そして「原理主義やある種の神話性に対抗する物語」を立ち上げていくことが作家の役割で「大事なのは売れる数じゃない。届き方だと思う」と述べた。 執筆の背景はカオスのように混沌とした冷戦後の世界で起きた1995年の阪神・淡路大震災と地下鉄サリン事件、2001年の9.11事件に言及した上で、村上は語っている。 「僕が今、一番恐ろしいと思うのは特定の主義主張による『精神的な囲い込み』のようなものです。多くの人は枠組みが必要で、それがなくなってしまうと耐えられない。オウム真理教は極端な例だけど、いろんな檻というか囲い込みがあって、そこに入ってしまうと下手すると抜けられなくなる」 「物語というのは、そういう『精神的な囲い込み』に対抗するものでなくてはいけない。目に見えることじゃないから難しいけど、いい物語は人の心を深く広くする。深く広い心というのは狭いところには入りたがらないものなんです」
」
— (毎日新聞インタビュー、2008年5月12日より)
主人公
モチーフではないかとされているもの
考察