「人生とは苦痛と退屈との振り子運動」
たしか高校の倫理の教科書(山川倫理)でも紹介されている。 ごく大雑把に考えてみただけでも、人間の幸福に対する二大敵手が苦痛と退屈であることが知られるであろう。そのうえ、この二大敵手のどちらか一方から遠ざかることができればできるほど、それだけまた他方の敵手に近づいているのだということが言えよう。したがってわれわれの生活は現実的には、強弱の差はともかく、この両敵手の間を行きつ戻りつしている動きなのである。それは両者が二重の相反関係、外面的すなわち客観的な相反と内面的すなわち主観的な相反の関係にあることから生じた結果である。つまり外面的には困苦欠乏が苦痛を生じ、これに反して安全と余裕とが退屈を生ずる。したがって下層階級の人々は困苦すなわち苦痛と不断に闘い、これに反して富貴の社会は退屈を敵として不断の、しばしば絶望的な闘いを闘っている。