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謎の行が入っている。おそらくふりがなも読みとっているからだろう

余計な行を除去したら本文に近づいた。

あとは校正していけばいいわけだが、一から書き起こすよりだいぶ楽な作業になるだろう

やってみました。とても楽。実感としては半分以下の労力と時間で出来そう

ふ風で、聴くにも識むにもおもしろく愉快なので、誰でもあの作者たちはトーマス様か、さ

もなくば教会の本山の博士たちてあらうと言ふのである。こんなものは余の書物には何一つある

まい。何故といふに余は何一つ欄外に引用すべきものもなければ終りに註釈すべきものもないか

らである。ましてこの書物の中でさういふものをば、皆人のするやうにABCの順で初めに置く

などゝ、どんな作者の例に倣ふか余は知らぬ。即ちちアリストートルから初まつてゼノフォーン

かゾイラスかジュークシスに至るまで、尤もそのゾイラスは

讒誣者でジュークシスは画家であつた。向また余の書物はその初めに短詩なしに済ますやうにせ

ねばならぬ、少くともその作者が公爵、候爵、伯爵、僧正、貴婦人または有名な詩人などである

やうな短詩は。尤も余が二三人の親切な友人に頼みさへすれば、彼等はさういふ短詩を書いて

くれることは分つて居る、しかもわがスペイン図内で最高の評制を得て居る詩人たちの作物も叶

はぬやうなものを。

『要するに君、』と余は続けた、『天が何人かに命じてドン・キホーテ殿の必愛とする一切のものを

以てあの人を装はしめるまでは、ドン・キ ホーテ殿は生地ラ・マンチャの古文書庫に埋もれたまゝ

になつて居るに違ひないと思ふよ。何故といふに、私は浅薄で学問が足りないので、さういふ

ものを供給するには力が及ばぬし、またさういふ人々を待たずして自分で言へることを言ふ為め

に他の作者たちを漁りまはるやうなことには、生来内気で無頓着な方ですからな。それで君の見

られた通り考へ込んで夢中になつて居つたのです。それも今御話した通りで十分道理がありませ

う。』

これを聴いて余の友人は、ぽんと一つ額を打つて腹の底から笑ひ出し、『いや君、全く今になつ

て初めて自分の間違ひを悟つたよ。実は君とお近づきになつてからこの方久しい間といふもの、

ずつと私は、君は何をしても機敏で悧巧な人だと思うて居つたのぢやが、今になつて君が、そん

な人間とは天と地の間ほども隔りのある人といふことが分りましたよ。何うしたんです?そんな

些細な容易いことを旨くするのに、もつとずつと面倒な故障でも砕き破つて行ける君のやうな知

慮の熟した人が、一生懸命に頭を悩ますとは一体どうしたんです、これはきつと、才能が不足

な為めではなく、あんまり惰けてゐるのと世間を知らなさ過ぎるとのためですよ。私の言ふこと

が本当かどうか知りたいと君は思ひますか?ふん、それなら私の言ふことをお聞きなさい、さう

すりや一遍眼を閉って開ける間に、私が君の面倒を残らず一掃して、騎士道の光にして鏡なる有

名なドン・キ ホーテの物語を世間へ出す邪魔をして気を挫かすと君が言ふ、さういふ不足の点は残