S&P500とオルカンはどちらがいいの
投資に興味がある、これから投資を始めようと言う人は、まず考えるのは投資信託が選択肢としてある。投資信託というのは、基本的には銘柄選びなど、お任せで投資ができるというシステムになっており、手軽に始めることができ安全性も高い(元本割れの可能性ももちろんある)。だが投資信託の商品は星の数ほどあり、また毎日のように新商品が増えていっている。数ある投資の選択肢の中から、投資信託を始めようと決めても、次には商品を選ばなくてはいけない。それでは初心者は何を選べばよいのだろうか。
そこで初心者におすすめされる定番はS&P500(以下SP)とオールカントリー(オルカン)の2つである。これら2つは証券会社の、売買代金ランキングなどでもトップ2をいつも占めている。ざっと概要を述べておくと、500はアメリカの優良500社へ分散投資ができ、オルカンは世界中の企業に分散投資ができる。投資を始めると、分散投資の重要性を耳にタコができるほど聞くことになるのであるが、この二つは良く分散投資ができることなる。次にそれぞれ二つの特徴を深堀りしていこう。
オルカンを選ぶ人の理由としては、まず何よりも最高度の分散投資による安心感である。世界中の企業に投資しているわけだから、これ以上の分散投資は無いと言ってよい。またSPではなくオルカンを選ぶ理由として、500社に分散していると言っても、米国に一極集中するというのは怖いというものがある。その点オルカンは、世界中に分散しているわけだから、万が一アメリカがダメになっても大丈夫という安心感がある。
SPの方は、米国株なので、何と言っても、現在われわれが知っていたり、実際に使っている企業のほとんどはアメリカの企業であり、そこに投資できるという醍醐味がある。実際、成績はオルカンよりもこちらの方が高い。年率のリターンを平均すると、オルカンが約5%で、SPは6~7%であると言われている(あくまでも今までは)。
この二つに限って言えば、オルカンがローリスクローリターンであり、SPがハイリスクハイリターンという構図がある。少なくともそうみなされている。しかしながらオルカンと言っても、その内実、60%位はアメリカであるということがある。また経済は繋がっているため、アメリカがダメになれば、他の国にも波及する。また暴落にも強そうなイメージがあるが、必ずしもSPよりも暴落しないという保証はない。ただ実際の所がどうかということは別にして、世界中に分散投資しているという絶大な安心感がオルカンの最大の強みである。このような主観的な安心感も投資においてはやはり重要なファクターである。なぜなら、この点を最後の最後まで追求して、客観的にすることは不可能であるからである。データはどこまでも調べて積み重ねることができる。それは客観を求める営みなのであるが、実際には客観に辿りつくことは無く、主観を強める営みなのである。
投資信託を始めると、「一番いい商品は何なのか」という問いに付きまとわれることになる。この問いは投資信託をやり続ける限りは終わることがない。そこでやることは、その比較をしているyou tube の番組を見あさることになる。(もちろん自分で生のデータに当たるツワモノもいるわけであるが、それはごく一部であろう。)
初心者はよくわからないので、500かオルカンを選ぶ。中級者は、知識がついてくる分だけ、レバレッジをかけたり少数精鋭であったり、よりリスクの高い商品を選ぶ。また個別株に手を出して失敗したりする。上級者になると、今度は1周回って、500かオルカンを選ぶ。ここで初心者と上級者が、内実は違えど結局同じ商品を選ぶというのは面白い。この内実が違うという内実は何なのだろうか。それは初心者は選択肢を知らないという外的な制限で選択をしている、いや選ばざるを得ないという意味では選択ですらないのかもしれない。一方、上級者の方は、色々な選択肢を知ったうえでそれでもSPやオルカンを選ぶという能動的な選択なのである。ただそれは完全な自由な状態で選んでいるというわけではない。実際に他の選択肢を試したうえで、経験などがあったうえで、SPやオルカンを選ぶのである。つまりここでは、経験が内的な制限として働いているのである。もちろん全ての選択肢を試すというのは、実際には無理なのであるが、いくつかの選択肢を試す中で、SPやオルカンのすごさに気づき、意志が形成されるのである。この意志が形成されれば、「一番いい商品は何なのか」という問いを抜け出る可能性が出てくる。意志があるというのは、決して客観的に見て一番いい商品が何なのかを知っている状態ではない。繰り返しになるが、人間にそれを知ることは不可能である。それでも、これだという迷わないで選択をできる状態が意志なのである。意志というのは経験を経て、育てられなくてはいけないのである。客観的に何が正しいかをしている場合に(そういう場合が本当にあるのかどうかは疑わしいが)それを選ぶというのは意志ではない。客観的には何が正しいかわからない、その中でも選択を行うのが意志なのである。
結局正解は、SPかオルカンを愚直にずっと保持し続けるというのが正解なのである。だがなかなかそれができないというのが、人間の難しい所である。なぜこれができないのだろうか。それは人間が欲と刺激を求めるからである。欲という点においては、
SPとオルカンは有名な指標のため、新しい投資信託が出るたびにいつも比較対象にされる。そのたびに、「こちらの商品の方がいいらしい」という考えにさらされる。そこでSPやオルカンを保持し続けるのは至難の業である。なぜなら投資をやる以上は、儲けたいわけだから、常に欲がある状態だからである。