2024/11/30
部屋の扉を開けといて絵具が乾くのを待っている
・この世には人の噂にのぼるよりもひどいことがたったひとつある。噂にされないということだ。
・ぼくは最近、秘密をもっているのが好きになった。現代生活を神秘化し、非凡化してくれるのは、秘密をもつこと以外にはなさそうだからね、どんなくだらぬことでも隠しておきさえすれば、魅力がますというわけだ。
・ ぼくはおおいにひとを区別している。友達を選ぶときには容姿の立派な人間を、知己を選ぶときには善良な性格の持主を、そして敵を選ぶには智能の秀れた人物を、といった工合に。とくに敵を選ぶ際にはくれぐれも注意が肝要だ。ぼくの敵には愚鈍な人間はひとりもいない。ぼくの敵はみんな大なり小なり頭がいいので、その結果、だれもが、敵であるぼくの美点を認めざるをえなくなる。自惚れすぎたやり口だとおもうかい? うむ、考えてみれば、たしかに自惚れかも知れない」
おーそうだったのかおめでたい㊗️
『地下室の手記』を読み終わった。一部は思想的で面白かったけど二部はしんどかった。二部も面白かったんだけど、語り手の破滅的な振る舞いが少し分かってしまうからもうやめてくれ〜って感じでキツかった(まったく共感できるわけじゃないけど)。 それに第二部の冒頭の旧友の送別会の部分は送別会ではないけど少しリアルで似たような体験をしたことがあって(とはいえそのときの自分は笑ってすませたのだが)、共感性羞恥というのか結構効いた。
語り手もだけど、理性によって「これをしたら破滅だ」というのが分かっているんだな。けれども気まぐれな欲求や自尊心みたいなのがそれを上回って止まらなくなる。それが破滅的ということなんだけど、そういうことは自分だけじゃなく意外と多くの人にあるような気がする。
こういう破滅的な作品をもっと読みたい。読みたくないけど読みたいみたいな。