集合知定理
集団誤差=平均個人誤差ー分散値
集合知定理がしめすのは、 集団における個々人の推測の誤差(第一項)は多様性(第二項)によって相殺され、結果的に集団としては正解に近い推測ができる、ということである。均質な集団ではこの利点を活かせないが(仮に分散値ゼロならたった一人の推測と同じ)、さまざまな推測モデルをもつ多様な集団なら、個々人がかなりいい加減な推測をしても、集団全体としては正しい推測が可能になるのだ。
しかし、この定理がしめすのはそれだけではない。 個々人の推測が平均として正しければ、第一項が減少し、集団としての誤差は減るというアタリマエの事実である。推測をおこなうメンバーのそれぞれの推測モデルの質がよいこと、しかも多様な推測モデルが用いられることが、集合知によって正解がえらえる条件にほかならない。
雄牛の体重推測の例では、コンテストの投票をしたメンバーは、家畜見本市におとずれた酪農家や食肉業者、農学部の学生といった、ある意味で特別な人々である。英国に修学旅行に行った東京の高校生のような、ずぶの素人ではなかった。各投票者はそれぞれ、同一ではないがきちんとした推測モデルをもっていたのだろう。だから集団の推測が成功したのである。つまり、集合知定理の第一項がかなり小さかったと考えられる。
ジェリービーンズの数の推測の例はすこし異なる。この場合、ビンのなかのジェリービーンズの数について、個々の学生が精度のすぐれた推測モデルをもっているとは考えにくい。ビンの容積とジェリービーンズの体積から推測値を概算する学生など、まずいないだろう。どの学生も直感的に、当てずっぽうの数をいうだけなのだ。そして、 この無意識の直感にもとづく推測が、たぶん若い学生の場合には割合に多様だったのである。つまり、第一項は平凡な値でも第二項の値が比較的大きく、結果的にこれが集団的な推測の精度を向上させたのではないだろうか。若い学生とはそういうものである。
参考文献・書籍『集合知とは何か』西垣通著