親子の役割逆転
親子の役割逆転とは、通常の親子関係とは真逆の役割が成立している状態のことであり、子供が、親のネガティブな感情や気持ちを慰める世話をさせられる状態に置かれている状態のことである。
「親子の役割逆転」とは、児童精神医学者として名高いボウルビィの言葉である。
親が子供に甘えるのは「親子の役割逆転」である。子供は、親の甘えの欲求を満たさなければ責められる。
この場合、子供は完全に「甘えの欲求」を否定されている。
「親子の役割逆転」をして育った人は、人の好意を怖くて断れない。大人になってもその感情的記憶は残っている。
幼児期や少年期にできたニューロンのネットワークは、そう簡単に作り替えられるものではない。
そうした環境の中で育てば、自分が何か言うことで、相手が傷つくことを恐れる大人になる。『メランコリー』という名著を書いたドイツの精神病理学者テレンバッハのいう「加害恐怖」に陥る。  
相手が不機嫌ということは、そういう人にとっては責められていると感じる。だからそういう人は、大人になってからも相手の不機嫌にいつも怯えることになる。
以下の参考書籍には次のような例が紹介されている。
友人から夕食に招待されて料理をたくさん作ってくれた。おいしく食べた。しかし、もうこれ以上食べられない。でも「もうお腹がいっぱいだからけっこうです」と断れない。
なぜ断れないのか。それは幼児期にそのような対応をすると、地獄の体験をしたからである。
つまり、「もう食べられない」と言った時に、母親がものすごく不機嫌になった記憶があるからである。
母親が「ケーキ食べる?」と聞く。子供は本当は食べたくない。でも「食べたくない」と答えた時に、母親がどのくらい不機嫌になるか体験している。そして、不機嫌の後、さらに延々と責めさいなまれるという地獄の体験をしている。
そこで小さい頃から、「ケーキ食べる?」と聞かれた時には、考える余地なく、喜ばなければならない。
参考:『心の休ませ方 「つらい時」をやり過ごす心理学 』