福音書の成立年代と成立順序
四福音書とは、「マルコによる福音書」「マタイによる福音書」「ルカによる福音書」「ヨハネによる福音書」を指すが、ヨハネによる福音書を除く三つは共通する内容が多く、比較しながら読むべきだということで、「共観福音書」と呼ばれている(山我哲雄『キリスト教入門』、岩波ジュニア新書)。 この中で最も早く成立したとされるのが「マルコによる福音書」。分量も一番少ない。
この『マルコ~』を資料の一つとして『マタイ~』と『ルカ~』が書かれたと考えられている。
しかし『マタイ~』と『ルカ~』には、『マルコ~』にはない共通の記述が多数見られる。これを聖書学では「Q資料」というらしい。
共観福音書には異なる記述も見られる。それぞれ独自の資料を用いて記載したと考えられており、これを「特殊資料」という。
三つすべてに共通する資料を資料Mとして、上記と合わせると次のようになる(塚本虎二訳『新約聖書 福音書』解説、岩波文庫)。 code:共観福音書の構成の概略
マルコ M+マルコ特殊資料
マタイ M+Q+マタイ特殊資料
ルカ M+Q+ルカ特殊資料
ヨハネによる福音書は、共観福音書とは直接関係なく、独立して書かれたと考えられている。
また、歴史的事実だけでなく神学的要素を多分に持っている。
福音書はどれも、イエスの死後40年~70年の間、少なくとも2世紀前後には成立し、ギリシャ語で書かれている。 塚本虎二によると、各福音書の成立年代は以下のようになる。
code:福音書の成立年代
マルコ 65~70年
マタイ 70年~8、90年
ルカ 70年~90年
ヨハネ 90年~100年(著者がゼベダイの子ヨハネの場合)、~140年(著者が長老ヨハネの場合)、しかし発見されたパピルスによると120年~130年までにはこの福音書は流布していた。