『天使とは何か』
岡田温司(おかだ あつし)著 2016年 中公新書 212ページ 京都大学教授であり西洋美術史研究家である岡田温司の著書。「天使」の概念がヨーロッパの歴史のなかでどのように変遷してきたかについて、西洋美術のなかでの天使の取り扱われかたを通史的にながめることで解説。11枚のカラー口絵を含む数多くの図版が収録されており、絵画、彫刻、そして写真、映画のなかでどのように天使のイメージが表現されてきたかを知ることが出来る。 第Ⅰ章 異教の神々ー天使とキューピッド
私たちが「天使」としてイメージしている存在ー翼をもち、頭上に光輪をつけ、若く美しい人間の姿で描かれる存在ーが、そもそもどのような存在なのかについて、各種聖典や古代ギリシア哲学で登場する概念などと照らしあわせて解説される。
天使、プットー(裸童)、スピリテッロ(小精霊)ー古代における異教の有翼の神々と天使ー異教とキリスト教をつなぐ「プネウマ」ー光の天使ー「ストイケイア(自然界の諸要素)」としての天使ー「ゲニウス(守護霊)」と守護天使ー宇宙を動かす天使ー九つの天空と九つの天使の位階ー天使の魔術 第Ⅱ章 天からの使者としてー天使とキリスト
神=精霊=神の子なるイエス・キリストというように三位一体の一角として把握されるキリストの、天使概念とのあいだでの距離感の変遷について解説される。
かつてイエスは天使であった⁉ーユダヤの天使崇拝ー神の顕現――天使かキリストか?ー外典のなかの天使とキリストー異端視された天使キリスト論ー天使キリスト論の現代における復活ー大天使ミカエルとキリストー大天使ミカエル信仰ービザンチンの大天使ミカエルー天使とキリストを結ぶ祭司メルキゼデクー三人の天使とアブラハムー中世の女性神秘家の幻視ー
第Ⅲ章 歌え、奏でよー天使と聖人
天使と音楽とのかかわりについて、ヨーロッパにおける音楽芸術そのもののとりあつかい・価値づけの歴史的変遷も交えながら解説される。
天使の合唱と合奏ー「宇宙の音楽」としての天使の音色ー楽器を手にしはじめる天使たちー天使の音楽と「アルス・ノーヴァ」ー天使のオーケストラー病と死の影ー架空の楽器、空想のオーケストラー聖チェチリアと音楽の天使ー法悦へといざなう天使の歌声ーバロックの奏楽の天使たちー聖フランチェスコと熾天使セラフィムー
第Ⅳ章 堕ちた天使のゆくえー天使と悪魔
天使の反対の概念として扱われることのおおい悪魔について解説される。
天使はなぜ堕ちたのかーサタンとルシフェルーティタンと堕天使ー外典『エノク書』のなかの堕天使たちー天使の「自由意志」その一――オリゲネスの場合ー善きダイモンと悪しきダイモンー裏切り者ユダ――サタンの手先ー魔術師シモン――ペテロの宿敵ー堕天使の「自由意志」その二――ミルトンの場合ーよみがえる堕天使たち
第Ⅴ章 天使は死なないー天使と近代人
近代以降の諸芸術のなかに現れる天使のイメージについて解説される。
現代の堕天使――ヴェンダースの天使ーメランコリーの天使ーさまよう天使ー芸術崇拝の天使ー水晶球の天使ー写真のなかの天使たちー詩人たちの天使ーエフェメラルな天使たち
気になるイタロー.icon