勝部 直人|M1|20200604|研究発表+討議
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M1 勝部 大学成立における背景 〜宗教・学問・教育〜
中世大学の出現
・コムーネの誕生、それに伴う法整備の問題から中世大学が始まる。
・特権階級の学問から市民の学問へ
・11~12世紀に起こり、12~13世紀に西洋で主流となった、「スコラ哲学」が学問の中心。すべての学問はカトリック教会、修道院に付属する「学校」(スコラ)において教えられ、研究されていた。
神学と宗教学の違い
近代大学の成立
・ドイツからカント理論に基づく、哲学が指導する形での学問が広まる。
・それまでキリスト教を中心としてあった学問が、哲学の指導の下で法学、神学、医学を軸とする学問が誕生する。
・国家の威光と、学問の威厳を体現する知の殿堂であり国家の枢要な機関として都市を飾る公共施設の一つとなる。
今後の展望
・中世大学→スコラ学、修道院をベースとする中庭型の単位
・近代大学→バロック的広場をもち、都市と接続する
これらを、どのように都市史へと展開できるか。
<議論>
日下
ドイツから広まる哲学を中心とする学問はどのようなものであったか。
→キリスト教の支配を受けにくかったドイツ学問が、フンボルトを中心として哲学による学問が広まった。
滝口
・どんな団体が母体か。
→フンボルトが集めた哲学集団。国家もかかわっている。→大学がバロック様式をとっている。
・大学が場所をどのように選ぶかについては興味深い。教会は都市の中心にある。
青井先生
ドイツの都市の歴史。
10~11C 司教座から、商店などが引っ付きながら発展
12~14C 商人が自治権を持っていく
20C初頭 国民国家の形成に向けて、ドイツ国家のモニュメント制作を競う。この国民国家を形成する動きの中に、大学、学問づくりもあったのでは。
滝口
近代大学の母体はどういう集団でしょうか?
勝部
ドイツのベルリン大学はフンボルトを中心とした哲学者たちです。ただ国家も深く関わっている。だから建築様式はバロックである。
<チャット>
青井
12世紀ルネサンスは重要ですね。小説(映画)《薔薇の名前》で描かれる、修道院での知的闘争が思い出されます。舞台となる修道院は、古代ギリシア・ローマの筆写本が膨大に収蔵される知的アーカイブであり、学問センターなんですが、キリスト教世界の最大の権威はアリストテレスなんですよね。カトリック教会・修道院が、聖書解釈を独占していた。聖書には理論はないので、アリストテレスにもとづいて理論的基盤をつくりながら、対外的な公式見解を整えるのだけど、聖書を厳密に理論的に探求しはじめると教会にとって不都合なことも次々に出てくる。12世紀ルネサンスは、修道僧たちのなかに、カトリックの公式見解を相対化して、聖書とアリストテレスに遡った探求をはじめる人たちが現れることとかかわっています。視覚造形文化のルネサンスは15世紀、なんですけどね。
中世大学=スコラ学、修道院をひきつぐ、建築群の中心としての中庭
近代大学=哲学中心、バロック的広場、都市との接続
青井
さっき僕が話したことはこの本で学びました。大原まゆみ『ドイツの国民記念碑 1813年-1913年 National Monuments in Germany 1813-1913』(東信堂、2003)大学についても、都市空間についても、とくに書かれていないけれどね。近代ドイツの国民国家形成と主要都市との関係は面白い。1814年段階では、たしか300くらいの都市であって、ドイツという国家はない。そこから1914にはひとつのドイツになる。あと、近代大学については、「公共性」が大きなテーマではないでしょうか?教師も、学ぶ側も、身分から解放される。空間もまた、何らかのかたちであらゆる国民に開かれる?その方向性が志向されたはず。
勝部
ありがとうございます。ドイツ史を深掘りしてみます。公共性はベルリン大学以降の大学空間においてとても大切なキーワードだと思いました。クワドラングルが持つ公共性も含めて。
青井
ヨーロッパでは、「公共性」とはすなわち、教会と王権からの人々の解放であり、彼らが独占していた空間や土地の解放なんですよ。
勝部
なるほど。公共性の視点からもう一度、大学空間の発展を見直してみます。
青井
どんな土地を取得して、キャンパスにしたかも重要かも。
<on slack>
滝口
ヨーロッパ各国の大学史・都市史を簡単に調べると、今後の研究の方針と展望も見えてくる気がします。
イギリスでは、ケンブリッジ大学とオックスフォード大学が2大大学で歴史も古いですが、共に私学で、ロンドン(首都)から50キロほど、と首都(行政の中心)との距離も似ているようです。フランスでは、パリ大学(国立大)が巨大ですが、パリの中心部にキャンパスが点在しているみたいです。国家と大学の関連も興味深いですね。行政府・経済活動の中心地に対して、キャンパスがどのような立地をしているのか、また大学組織が、どのような社会体制(国家、貴族、宗教、学会など)を基盤に成立しているのか、といった空間編成と社会組織編成の相互関連から、都市形態を考えていくと、面白い着眼点が見えてくるのではと思います。