📖『街とその不確かな壁』（上）村上春樹（新潮文庫）

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読みながら、何故解説を与えてしまうのか、あれ以上の説明や付け足しは必要なかった、という気持ちになりながらも、でも私も『世界の終わり…』を読んだ時からは何十年も歳をとって、もちろん作者も同じだけど歳をとって、それでもあの物語を語り直す必要があったのだろうと思うし、だとしたらそれは何なのかな、知りたい。という風に思う。

最後（下巻）まで読んだらそれが見えてくるだろうか。

しかし相変わらず村上春樹の物語には理由も言わず消えてしまう女性がおり、不思議を匂わせられた主人公が「そういうことってあるんだ。人生とはそういうもので、それは風のようなものなんだ」みたいな分かったような分からんような納得の仕方をしつつ、それでも何十年もその喪失をちびちび味わう、みたいなことで成り立ってはいるな。

現実でこういうことがあったとしたら、これらの主人公みたいにいつまでも引きずるべきじゃないと私ならアドバイスしたい。こんなことを女性が言って去るのはたいてい実際は大した理由はないがもうあなたといたくないと言えないだけなんじゃないかと思う。しかも十代の時のそういうセリフに、50歳になった人がいつまでもここまで強く囚われているってどういうことだ、とも思う。そういう人間であることが透けていたから、相手はまともな形で別れを切り出せずうやむやに去ったのではないか。（とか言うのは意地悪かな）

若い頃村上春樹作品を読んでいた頃にはわからなかったけれど、自分もこうしていい歳になってみて、いくら「運命」みたいな相手、美しい思い出があったとしてもこんな風にいつまでもそれで心の空洞を浸しているというのはいかにもナイーヴに感じる。

村上春樹作品に出てくる男性は何歳であろうとも精神が学生のままだし、ヒロインは人間というよりは主人公の理想を写した鏡でしかなく、ココロがない。そのわりには自分の問題の全荷重を相手にべったりかけるタイプ。

悪口みたいになってしまった。実際はそこも興味深く思ってもいるのだけれど。

このスタイルを若い頃からもう老年に差し掛かろうという今までずっと続けているということ、何か同じものを求め続けているということには興味を感じる。