📖『菜食主義者』ハン・ガン/きむふな訳(cuon)
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表題作を読み終えた。
この数年で韓国ドラマをたくさん見たので社会の中にある雰囲気や問題についてなんとなく想像できる部分があって、それを重ね合わせながら読む。まだ他の著作を読んだことがないけれどおそらくこの登場人物だけの、またはこの人物たちが生きている時代だけのことが書かれているのではないのだろう、現代の韓国社会が過去から引きずってきたことがあらわされているのだと思う。(そんなこと言ったらどんなものでも、直接に描かれたその時のことだけを書いているわけではないのだけれど)
表題作を読んだ、などと書いたけど続きを読んでみたら同じ家族の話だった。
二番目の映像作家の夫の話、出来事としては救いがないがここにある自分が見たいもののビジョンを無我夢中で結び、なんとしても表出させたいという強い熱や欲求はどこか我がことに繋がる感じがするし(もちろん表現方法は全然ちがうけど)、それから感情の入る隙間のない密度は好ましいと思った。
個人的には傷についてはもっと高次元からそれを俯瞰することのほうが好みだし、その俯瞰によって悲哀が表面的なものに終わらないものに惹かれる。(百年の孤独みたいに。めちゃくちゃひどいことも起こるけど神話のように、人間を超えて生き物としての性(さが)のようなものにまで遡って捉えられている。…って、あまりにも違うタイプすぎて比べる対象として間違っているか…)
とはいえ、筆力のある作家だと思ったし、他の作品も読んでみようと思う。