🎪『NOWHERE』ディミトリス・パパイオアヌー

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私がこの方の作品を観た時にいつも感じるこの「なにも積み上がらない」という感触は一体どういうものなんだろう。

それぞれの画面の美しさにはっとすることもあるし、そこで起こる出来事はとても洗練されているのだけれど、いつもそれ以上の感想を持つことができない。

別に私は生身であることや、有機的でないものをすべて否定しているわけでもないし、タルコフスキーの映画を思い起こさせるようなシーンには心を掴まれたりもする。おそらく作家が意図しているであろう、大勢の人が舞台にいるにしては静かで、でもさやさやと聞こえる音の効果も取り逃がしているわけではないと思う。

でもなんだか、多くの画や作業が淡々と（淡々というのもその意図のひとつだということも分かるのだが）次々に流れていって、いやこれはただ場面転換のスピードの問題だけではないのだけれど、強くなぞりかえされたり、振動し続けるような感じがまったく残らない。

何かがありそうだと思うから感覚を大きく開いて拾おうとしているのに、なにも引っかかってこない。

たくさんの出来事が起こったのに、そのひとつひとつは大掛かりで美しいものだったのに、何故なんだろう。

最後の方はNetflixのよくできたドラマの映像みたいな感じがしてきてしまったので、これはどういうことなんだろうと考え込んでしまった。

以前観たオリンピックの開会式とか、閉会式かな？のあの時間はほんとうに「スペクタクル」という感じで素晴らしかったし、彼の作品を映像で観たときにはいつもわくわくするんだけれど、こうして舞台公演本編を見ると、偉大な絵画をさっさっと早回しで見せられたような感覚に終わる。

https://vimeo.com/135839020

ピナの追悼の作品もあれだけ良いダンサー、良い舞台装置、センスも良いし、お金もたくさんかかっているのに「こういうことじゃない気がする」という気持ちが拭えなかった。

じゃあどういうことなんだ、ということが自分でもちょっとわからない。

私が、ここに何が決定的に足りないと思っているのか、いつもわからない。

批判したくて見るわけじゃないのに（どんな作品だってもちろんそう）、こういう感想を持つことが最近は多くて、おおよそ何も好きじゃないのかなと自分を疑いたくなる、…が、全然そんなことはない。粗のある作品でもそれがなんだかとても良いなと思えることもあるし…。

もちろん私の評価は相対的だから、彼の作品にはこのくらいの期待をかけてもいいだろう→でもダメだった／彼の作品はこのくらいの感じだった→今回はぐんと抜けていた、などと、評価の基準はいつも一定ではないというのもあるのだけれどそれでも…。

私が彼の作品で一番好きなのは上にのせたものと、以下の『INSIDE』だ。

彼が作っているのは身体表現じゃなくて、ひとをつかった視覚的デザインなのかもしれない。

惜しいのは、そこに時間の圧縮や拡張がないこと。

ここまでデザインできるひとでも、そういう濃淡を作ることは容易ではない場合もあるわけだ。

https://vimeo.com/74864424

あ、『INSIDE』は観られなくなってますね。（2022-11-30現在）