2025-07-21

最近の新しいドラマを見ているとあえてマイノリティーを登場させるシーンが頻繁に出てくる。そういう要素がないと制作を許可されないような流れがある（「ジェンダー問題」「平等」「SDGs」「地域活性化」を必ず含めよというのが学生には課されるのだそう）のを知っているので、作品の内容を深めることと、社会的に受け入れられることとの重要性との間のバランスがあまり良くないなという気がしている。

一方で、私自身、例えばお金持ちの白人女性が黒人男性と一緒にいる場面で二人が夫婦であると気付くのが遅れることがあるのも確か。それは長年積み重ねられてきた偏った“常識”に自分も染められていることに気づく瞬間なので、人々に深く刻まれた偏見をほどくために必要なことだと考えたりもする。つまり決して全否定したいわけではない。

ただ、創作というものが、多くの人に受け入れられることだけを目標に作られる現状に危機感を抱いてもいる。（そもそも私が見ているのはNetflixなどそれこそ全世界のなるべく多くの人に目にしてもらおうということが目的のサイトにあるドラマだったり映画だったりするのだから、私が望んでいることこそが場違いであるのは分かってもいるんだけど）

過去の偏った視野を、思想もないまま表面的に訂正しようとするのもまた過去と同じ轍を踏み続けるだけなんじゃないかなというふうにも思う（自分の作品に、こういうテーマを入れよと言われてそれを受け入れてしまう作家に、深い思想があるとはなかなか思えない）。本当は歪んだカテゴライズから脱却しなければならないはずなのに、かたちを変えて別の方向にカテゴライズしているだけというか…。形だけ「平等」を装うことでOKが出てしまうものを、私達は表面的に「安心」して見ている。作り手も受け手も思考停止したままそのテーマを扱ったところで、問題は引き続き名前を変え、細分化されて続いてゆくだけだろうと思う。

心地よいところをつまみ食いするのもそれはそれで良いけれど（楽しいし、息抜きだって必要）、根本に触れようと思えばその態度のままではいられない。仏教をヨガと結びつけてただ心が安らぎ体を解放するグッドウェルネスとして受け入れて仏教を知った気になるのと同じだ。それは仏教という哲学を利用しているだけ。理解しようとする態度とはいえない。

マイノリティに対する態度も同じこと。私には多くの態度が時々問題をファッション化しているように見える。

誰もが生まれながらにして平等で自由で幸せであるのが良いと思うけれど、そんなこと言っても世の中にはクリーンなことばかりじゃなくて負担や損を引き受けなければならない場面がある。それを誰も引き受けたがらなければ？自分が捨てたゴミは自分の目を離れた途端に消えてなくなって酸素に還るわけじゃない。それでは自分は相変わらずマジョリティであるという幻想のなかに居続けるだけ。表面的にきれいになった世界を見て「良い世界になってきてる」と思うだけで、その下には相変わらず問題が塗りつぶされ、隠されて窒息している。

Twitterとかでよく物に対する目利きみたいな感じでシンプル且つこだわり抜いた物だけを身近に置いて素敵な感じにしている人がいるけど、そういう人が毎日のように「私のおすすめ」とか紹介してでも家の中は身綺麗な感じにしているのを見ると、その後ろにある膨大に捨てられたものが浮かんできて恐ろしくなる。ミステリーとかの真っ白なキッチンとかの壁に猫とか人とかが塗り込められているのを想像してしまう。

人の行動や作品を悪く言うのはやはり消耗する。聞いても面白くないだろう。でもこれは今の世の中が今の世の中になってしまってまだまだ転がり落ちていることと決して無関係ではないと感じているからつい書いてしまう。