2025-07-04

最近は作品を売るのに社会問題とからめてプレゼンすることがなかば当たり前になっているから、人とクリエイションをするとその部分で行き詰まりを感じることが多い。

フェミニズム、ジェンダー平等、地域活性化、移民問題…私もそういうことがらに無関心でもないし自分が、またはアートみたいなものもそこと無関係とも思っていないのだけど、だからこそ表面的なことはしたくない。

例えばフェミニズムひとつとってもそのイズムにくくられる中にいるお隣同士の人は全く同じ方向を向いているわけでも視野の広さが同じわけでもない。仕方ないし当たり前のことだけど。でもそこをひとくくりにしたまま自分の大事な「ことば」のなかに詰め込みたくない。共演者とだって考えはまったく同じではないのだ。見る人とだって「フェミニズム」というものへの体験や態度は違う。当たり前だ。同じ人間ではないから。でも名前をつけた途端に同じものを見ていると錯覚させてしまう。それを土台にして、本当に見る、ということの気を逸らしたくない。共通言語にもなっていないものを共通していると甘え切りたくもない。

問題提起のためには名付けが必要であったかもしれないけど、もうそろそろ「イズム」のようなくくられかたの中で思考停止してしまうようなことにはうんざりしているし、だからこそ私がその名付けに加担してどうするんだ、というような気持ちがある。複雑な社会の中にある複雑な問題を複雑で名前を与えづらいままにあらわしてみる人がいたっていいではないか。もちろんプレゼンには題名や筋が必要なんだから、それは何にでもこじつけたらいい。逆にどうにでも受け取れる、どの観点からみても「これは私の問題を問われている」と感じられるようなものを作るのが私にとっては大事で…。主題に自分が左右されるんじゃなくて、自分が強くみたいと思うもののなかには私がこの現代に生きている限りその主題が見出されるはずであるとも思う。

ある問題は名付けられることで意識されて話題に登って変化が訪れるけれど、ある時点をすぎたら、名前がついていることの限界を脱ぎ捨てるのがいいと思う。だって名付けは何かを囲い込むことでもあるから。

現実世界ではなかなかそこから離れられない、だからこそそこから脱臼した視点を試みられるのが芸術のひとつのありような気がする。

こんな面倒なことを言い続けるのも嫌になってしまう。よくないな。文句や批判を言うよりもできることが他にあるならそこに時間を使わなきゃ。

今日はSのコンサートなので楽しみ。うまくいくといいな。