2025-06-09

深夜に来ていたメッセージに返信するも、延々と続くやりとりに疲れてしばし休憩。自己主張は大事だけれど、それが故に視野が狭くなったり人の意見をいっさい聞かない（文字通り、こちらが口を開こうとすると自分の話をしだすので口を挟む余地がない）のは困ったもの。

誰かと一緒に作品を作ろうと思う時、特にフランスで顕著だけれど、私からすると非常に効率の悪いやり方で作ろうとする。ものを作る過程がまるで違うから仕方がないんだけど、映画監督がひとりでなく5人だったら作品がブレるであろうように、ダンス作品だって大勢の意見を全部取り入れて作り上げたら緩いものしかできないと思うんだけれど、たぶんこちらの教育はそれが主軸になっているのか、それかやはり助成金をもらっているのでどれだけでも時間をかけられると思っているからか、やり方が違いすぎる。

私なら自分で作品の見通しを立て、やりたいシーンのビジョンを決め、必要な場所に必要な日数だけ出演者やスタッフを呼んで作る。最後の方はもしかしたら細かい削りが必要でダンサーたちに無駄足を踏ませることもあるかもしれないけど、個々のリハーサルは4回くらいかな。都度宿題を出して次回までにお互いの見たいものをすり合わせる。全体のリハーサルは3回は欲しいかも。人数や規模にもよるけど1時間作品、ダンサーが2,3人なら2ヶ月あればできるかな。3ヶ月あればありがたい。

でもこれまで参加してきた作品はまだ何も決まっていないところから呼ばれて「何やりたい？」から始まる。今まで一番ひどいものはあなたは5歳の女の子役だけどどんなお話にしたい？って聞かれてえ？それってジョージ・ルーカスがC3PO役の人に「何も決まっていないけどどんなストーリーにしようか」と相談するのと同じだし、そんなこと言われたら可能なことがありすぎ、しかも7人もいる出演者全員に同じことを訊ねている。それをひとつの物語にするなんて高いレベルの力量が必要だと思うけどそうは想像できないんだろうか。そもそも作りたいものがあるから呼ばれたのだと思ったのに…ともやもや。ビジョンのないジョージ・ルーカスなんて嫌だ。やっとリハの日付が決まり、ダンサー/音楽家が集まって前半1時間は楽器の組み立てや配線で終わり、やっと何となく即興で動いて、10分くらい踊ったらあとはずっと話すだけで終わる。話してないで動いたものをビデオで撮って客観的に見て、そこに表したいものが見えてくるのか、見えてこないならどうしたらいいか考えてまた動いてみて…を繰り返そうよと言っても口しか動かさない。哲学的な話を満足にしてその日は終わる。1ヶ月後また招集されて同じことをやる。ちょっと振付が決まる。また1ヶ月後集まるが、誰も前回のリハーサルのことも振付も覚えてこない。復習で終わる。私がビデオを撮っておいてみんなに配る。少なくとも振付を忘れないように。自立したダンサーなんだからできれば自分なりの発展をさせて次のリハーサルに持ってきて欲しい（私はいち出演者であってそんなことを望む立場じゃないんだけど誰もやらないので…）。でも誰もそのビデオを見た跡のないまま次のリハーサルが始まる。1ヶ月おき、または2ヶ月おきにそんなリハーサルがあって、もちろんバカンスはみんな休むのでリハーサルは時には4ヶ月くらいなくて、1年経ってもほぼ初回と同じ状態。ある日急に「今日はビデオを撮ります」と言われる。助成金のプレゼンテーションのためだ。まただらだらと何も決まっていない即興を踊る。そこにすごい考え抜かれたコンセプトの文章がかぶさって劇場に提出される。コンセプトのおかげで本番が決まる。途端にみんな焦って「何やりたい？」を再び始める。誰も私の撮った「反省し、次回のリハーサルに活かすためのビデオ」を見ないし、作品を作るために私はらこうすると話してあげても、そういう面倒なことは誰もやりたがらない。めちゃくちゃなままゲネになだれ込む。自分が立つ舞台をひどいものにしたくないから、最終的にはただの出演者である私が演出に口出しをして場面をカットしたり変更したり、本番中も舞台上にいる時には私が間をもたせたりフォローしたりすることで（みんな本番もいっぱい間違えるから）なんとか本番は成功する。お客さんの評判はいいからみんなは無邪気に喜んでいるけれど、成功したとおもうから反省がない。私だけが「どうしてあんな出来のもので拍手をもらえたのか」と冷や汗をかいている。

私が言っていることはそんなに難しくなくて、こんなものが作りたい！という強い欲求とビジョンがないうちに私を呼ばないでくれ、ということだけ。

あなたの作品を作れるのは私じゃない、あなた自身しかいないし、どうしてその特権を簡単に私に譲ろうとするんだ。譲るなら引き受けるけれど、引き受けたからにはそれはもうあなたのものではなくなってしまう。作品とはそういうものだと私は思う。私が引き受ける覚悟を持ったらあなたの意見は入れられなくなる。だってブレるから。そのブレに気づかないから色んな人の意見のツギハギで作品を作ろうとする。でもそんな作品良いわけがない。実際良くないものが量産されてる。

必要かどうか考えもせず「なんとなく」集められると困る。フリーランス＝暇なわけではない。仕事を休んだのに無意味な時間を過ごすのは辛い。自分の創作時間を削って仕事をしているわけで、その仕事の時間を削られるのであれば有意義なことであってほしい。創作、という自分にとっても大事な分野でいい加減なことをされるとすごく悲しいし腹が立ってしまう。それならばもっとしょうもないことに時間を使われる方がマシ。そこに私の「同じ創作する立場ならわかってよ」という甘えが一切ないと言えば嘘になるかもしれない。でも世界中に作りたいけど作ることだけに没頭はできないという人はいっぱいいて、それを国からお金をもらってできる立場にいるなら、もっと真剣に作る義務があると思う。羨ましいからとか、自分はその立場になれないからキツイことを言うわけじゃない。文化はインフラのようなもので、自分の人生だけで終わらせてはいけない役割がある、だからこそ国から助成が降りているわけで、自分の才能や幸運だけにあぐらをかかず自覚的であってほしいと望むのは、個人的な甘えともまた違う。

主語を大きくするのは良くなくて、もちろんここにも良い作り手はいる。でもコンセプトばかりで型にはまったような作品も多い。流行りのテーマばかりを追って底の浅いものもたくさん。

いいものを見たいし、関わりたいし、それが生まれることで世界が豊かになってほしい。

フランスで私が感じるジレンマ、いつもこんな感じ。

悪態ばかりついている自分に疲れてきたけれど、もう限界…となってしばらく引きこもっていたんだった。こんな思いをするくらいなら誰にもかかわらずひとりで作ったほうがいい。でも、それだとこの国ではぜんぜんやっていけないのも確か。

よし、とはずみをつけて外に出た途端、考えのズレに振り回されてまた疲れてきた。

体力と精神力をつけなければ。

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私のCosense、他の人と違って全然楽しくない。

楽しいことも一日にはあるのだからそれを書きたいけど、本当に楽しい時にはここを開いたりしないので難しいな。

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結局メールのやりとりにほとんど一日費やしてしまった。

包丁が握れるようになったので今日はちょっと時間をかけて多めにおかずを作る。

□山芋と豚肉の炒め物

□人参とさつまいもをオーブンでグリル

□ヨーグルトときゅうりのソース

□生ビーツとトマト、きゅうり、キヌア、クスクス、麻の実あたりを入れたサラダ

ハン・ガンの『別れを告げない』を読み始める。

最初のひとかたまり、一章と呼んでいいのかな、を読んだがきりきりと引き込まれる。否応なく自分が一番弱っていた時期のことを思い出したりもする。もう痛みはなく、懐かしく。