2023-12-17 霧の朝
静かだな、と思ったら霧だった。遅起きしたので消えかかっていたがまだとおくの町の音を包み込むほどには残っていて、窓をあけるとひんやり、吸い込む空気が水っぽい。濃い霧の中を散歩するのは泳ぐのに似ている。霧の多い町に住むひとの肺には少しずつ水がたまって、寝転ぶと音がするかもしれない。
時々水を呼吸する夢を見る。空気よりも密度のある速度で鼻や喉を通り、ほんのり甘い。いつもはじめの数呼吸は怖い。でもすぐに慣れる。体が水で満ちると、全身が流れだし、どこまでも泳いでゆける。
起きている時、顔に水が触れると少し慌ててしまう。水は怖くない。ただ、夢のときのように躊躇なく呼吸してしまいそうでそれを恐れている。
このままではかえって布団が湿ってしまいそうだから窓を閉め、ガラス越しに霧を眺める。
目の前が曇ってきて、霧なのかわたしなのかわからなくなる。