2023-09-06 今日のメモ
アイスランドで百物語からヒントをもらったパフォーマンスをした。なぜ百物語だったのかは覚えていない。蝋燭を灯しながらいつまでも話した夜を思い出したからかもしれない。 始まりも終わりも見ることのできない踊りをしたかった。いつ始まったかも知れず、いつ終わるのかも分からない、もしかしたら永遠に続いているもののほんの一瞬だけを見てしまったのかもしれない、そう思わせるようなもの。
いつから存在しているのか分からない打ち捨てられた舟の中、終わらぬ物語を踊り続けている。
何かを話しているようでもある。知らない言葉で語られる、遠い国のはなし。近海で沈んだ名もない船乗りたちの話かもしれない。物語の断片が吹雪の切れ端に、ちぎれた炎に照らされて見えては、薙ぎ払われてゆく。幻をみているのか、自分の思い出を辿っているのか分からなくなったころに、物語は闇の中へ吸い込まれる。
その夜は吹雪だったので、舟でやることはできなかった。子供たちが息を止めながらみていた。
私はその土地にいまも眠っている、近海で沈んだ名もない船乗りたちの話をしたのだった。