2023-08-28 形にすることがいつも良いとは思っていないけれど、舞台から落ちた話
言葉にしたくなかったことを、でもあえて言葉にしてみた。
自分の胸の内ですらそんな風にはっきりさせたくなかったから胸が痛みながらではあったけれど、濃い霧のように肺全体を侵食させているよりはましかもしれないと思った。
こういう時に日記はいいね。
自分に何ができるのかが分からないなあとずっと思っている。
好きなことはあるし続けてきたことはあるけれど、それは誰かの役に立ちそうにないし誰かにとって価値が出そうなことでもないし、自分の身を助けるほどのことにもならなかった。
今までひとつだけ、舞台本番の記憶がまるでないものがあって、リハーサルを何度もしたのも覚えているし振り付けすらほんのり思い出せる、本番を終えてすぐにバスで長野まで帰ったことまで思い出せるのに、本番の景色もオペラの人たちとゲネしたことも思い出せないものがある。
あれは私本番をばっくれたわけじゃないよね?って怖くて誰にも聞けない。いや、絶対に出たはず(当たり前だ、出ないなんてことしない)。楽屋も覚えてるし。何故ゲネと本番だけ思い出せないんだろう?舞台のセットも思い出せないしオペラのどの部分で出演したかも思い出せない。
でもここまで考えて、そういえばこのあと長野に帰った時に真っ暗な雪山道をひとりで歩いたりして怖い思いをしたし、そのあとに怒涛に大変なことがあって全体的に覚えていることが少ないんだったということを思い出した。
本番のことすら忘れるなんて。
思い出さなくても良い、いや、思い出したって良いのだけれど、わざわざ嫌な思いをすることもないので思い返さなくたって良いことを、近頃またちらほら思い出す。
もう記憶の方から私を捕まえることはない。私がいたずらにそれを追おうとするだけなので、私のほうが放っておけば、それはちゃんと過ぎてゆく。