2023-07-23 今日のメモ
引き続き『闇の左手』を。
相手の知識や視野が自分より高い/広いことを認識しながら同時に相手は自分と同じレベルである、というようなことを観察することはできる。エの観察眼は冷静で客観的でもある。それでも生きてきた環境によって無意識に染み付いている認知の偏りというものはあって、もしかしたらこの小説はそのことに関する思考実験のよつなものなのかもしれない。
エストラーベンの観察眼は冷静で客観的。それでも生きてきた環境によって無意識に染み付いている認知の偏りというものはあって、もしかしたらこの小説はそのことに関する思考実験のようなものなのかもしれない。
私は作者のジェンダーに関する考えを他の著書で何となく読んで知っているが、作中には「女性/男性ならではの〜といった性質がみられる」というような性差による固定観念のようなものが書かれている。これは著者の考えではなくて登場人物の考えなのだけれど(そういう価値観を持った人物として描かれている)著者を知らない人にとってはこれが著者の価値観であると受け取られそうだなと思ったりした。
主人公には作者本人の価値観が投影されているわけでは必ずしもない。特にフィクションは。それはごく当然のことなのにひっかかりを感じたのは、主人公を「まともな感覚の人」であるように書いていると読んでいたから。
「このひとはまともである」という感覚と、ある特定の問題に対する感覚とが微妙に自分と違うことは往々にしてある、ということを私はまだうまく身に浸透させられていないのかもしれない。