2023-01-01 表層の華やかさ
先日注文した有名店のお茶を飲みながら、素敵な香りがするけれど茶葉の深みが感じられない、第一印象の華やかさに比べてあとに残るものが薄いなということを話した。せっかく買った美味しいはずのお茶にケチをつけるのは気が引けたけれど表にあるものと実質のようなものの間に落差があることが気になった。
これは多くの香水にも感じること。つけた瞬間には良い香りなのだけれど厚みのない感じがして長くつけていると疲れてくる。誰かのイヤフォンからこぼれているシャカシャカした音をずっと聞かされているみたいに、薄くて馴染んでこないような匂い。
もしかしたら私が近づけないような高いお店の香水は違うのかもしれない。
表層がそれらしき香りがするのにその奥に根っこがないというか、本質が軽いような感じ、というのは今の世界にいっぱい転がっている。でもそういうものでも多くの人に評価されている。
フランスで長く添加物の入っていないものばかり食べているので、時々日本のお土産をもらうと薬臭かったり甘味料など薄っぺらい甘さだけが舌にこびりつく感じで食べられなかったりする。ふわふわさくさくと口には優しいけれど味に芯がない。
でもそんなことは日本に住んでいる間には気づかなかった。
先入観や習慣から離れてものを見るのは簡単じゃない。
これはパリで人気のお茶です、とある女優さんのお気に入りの香水です、と紹介されればいいものなのかもしれないと手にとってみて、自分の感覚までごまかしながら「これは素敵だ」と思い込んで疑うことがない。
私はこうして新しい国に来て「なんにも知りません」というところから始めることができたから、そして実際何にも知らないから、自分の感覚だけを拠り所にして周りを見ることができているのかもしれない。
もちろん私も偏った見方から離れることはできないに決まっている。
この数年は社会が大きく変わっているから特に自分が持っていた当たり前を更新していかざるを得ないし。