Stripe Sigma 概論
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MRR、LTV、ARPUなど、SaaSビジネスでは様々な指標が活用されています。Stripeでサブスクリプションサービスを運営している場合、管理画面のBillingを開くと各種KPIを日別・週別に確認することができます。
https://gyazo.com/58ea81467de72201d82ed750fd747aef
(このスクリーンショットはTEST DATAであり、特定の事業とは一切関係のないデータです)
設定せずに指標を活用できるので大変便利ですが、実務では例えば「プランAとプランBのMRRを比較したい」「ユーロ建て決済のARPUを知りたい」といった少し込み入った指標が必要になることがあります。
このような時にStripe Sigmaを使うと、インタラクティブなSQL環境を使ってStripeに蓄積されたデータを簡単に集計できます。自由度が高い環境で素早くレポートを作成できるため、事業解像度を容易に上げることが可能です。 Stripe Sigmaを有効化した場合、既存のStripe手数料に上乗せする形で手数料がかかります。大雑把な言い方をすると、月間決済数が3,000件で$100程度かかります。10,000件では$250程度です。Stripe Sigmaのランディングページには手数料シミュレータも設置されているので、手数料の概算を算出するとよいでしょう。 https://gyazo.com/bd59387a99f9db655726fadb8888f26c
Stripe Sigmaの導入
Stripe Sigmaの導入は簡単で、ランディングページの「申し込む」リンクをクリックするだけです。
https://gyazo.com/951fcea7d2c1897e37fe389ad55d1155
すると、利用準備に入るので、2日間待ちます。恐らく通常のStripe DBとは別にSigma専用のDBを用意しているものと思われます。
https://gyazo.com/2c784811a60ce864288662b9f5376448
データの準備が完了すると、管理画面の左側ペインに「Sigma」が追加されます。Stripe Sigmaの対話型インタフェースへはこちらのリンクから遷移します。Stripe Sigmaにテストモードはないので、基本的に本番環境のデータを取り扱うことになります。
https://gyazo.com/f2bb4f59c34a8c7b08a4513a12fce1f1
Stripe Sigma 画面解説
Stripe Sigmaのページに遷移すると、下図のような3ペインのUIが表示されます。
https://gyazo.com/79ec34c2f8be9f7291ae092c3ffec032
左ペインはQueries, Schema, Templatesの3タブに分かれていて、それぞれ「保存済みクエリの一覧」「DBスキーマのクイックヘルプ」「デフォルトのサンプル集」を開くことができます。特にサンプル集では、ARPUの集計や未領収の請求一覧などすぐに活用できるサンプル集が揃っています。これらのサンプル元に、自分のほしいクエリに書き換えると便利です。
https://gyazo.com/92557ba5e7c1125fd11c0ac88ed28475
右上のペインはSQLを入力するためのテキストエリアで、シンタックスハイライトや入力補完を含む完成度の高いUIになっています。内部ではPrestoが利用されていて、癖のないSQLを利用できるため、SQLの基礎的な知識だけあれば十分にSigmaを活用できます。 https://gyazo.com/0fb067c65aef6919404501a596eccea4
右下のペインはクエリの実行結果を表示するレポート画面です。列名をクリックすると実行結果の昇順降順を切り替えることができます。また、「Download CSV」ボタンからCSVファイルをダウンロードできるので、Microsoft ExcelやGoogle Spreadsheetなどに取り込んでビジュアライズすることで、より事業に対しての理解を深めることができます。
https://gyazo.com/2f0c73c5550a247d15385f1955f7e6d1
その他の特徴
特定周期で自動的にSQLクエリを実行してWeb Hookに通知する、Scheduled Queryを設定できます。月次集計などを設定しておくと便利です。
Stripe Sigmaで取り扱えるデータは2日前のものです。そのため、例えば前月サマリーを毎月集計する場合は、毎月3日Scheduled Queryを実行するのがおすすめです。
Stripe Sigmaで発行できるクエリはRead-onlyです。そのため、マーケターやアナリストなどにそのまま権限付与してもデータベースを破壊される心配はありません。
むすびに
SQLクエリを使って気軽に集計できるStripe Sigmaについてご紹介しました。日本ではあまりStripe Sigmaを活用している事例を見かけることがありません。恐らく自社で整備されている方が多いのかなと思います。しかしStripe Sigmaを使うと、手数料を上乗せするだけで完成度の高いIDEと分析用DBを入手することができます。少人数で開発業務を進めている企業や、何らかの理由で自社DBに問題を抱えている企業には福音と言えるのではないでしょうか。
Stripe Sigmaについてはまだ日本語の文献が少ないので、今年8月に開催されたJP_Stripes Kyotoにて登壇した際の資料「アツい!StripeSigma」も合わせてご覧いただければと思います。おそらく、日本で最初のStripe Sigmaを主題においた登壇発表ではないかと思います。 -.icon
おまけ
以下のSQLクエリは実際にNota, Inc.でStripe Sigmaの導入を検討した際に利用したものです。Stripe Sigmaのトライアル期間がスタートしたら、以下のクエリを実行して手数料シミュレータに入力することで、Stripe Sigma導入による一ヶ月あたりの手数料増加分を概算することができます。 code:直近1年間のcharges数を月ごとに集計.sql
with month_charges as (
select
charges.id,
date_trunc('month', created) as month
from charges
where date_trunc('month', created) < date_trunc('month', current_date)
)
select
month,
count(id) as charges_count
from month_charges
group by 1
order by month desc
limit 12
このようなリストが12行出力されます:
code:table
month charges_count
2018-11-01 54,321
2018-10-01 43,210
2018-09-01 32,109
2018-08-01 34,567
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