1. 講義全体の概要
2020/4/15(月) 応用数学1
担当教員:伊達 章 (だて あきら) A-333
date@cs.miyazaki-u.ac.jp
成績の評価方法:(昨年まで.本年度は未定)
期末試験 $ 70\%,小テスト・レポート $ 30\%
教科書:
常微分方程式 (理工系の数学入門コース 4) 矢嶋信男 著(岩波書店) https://www.iwanami.co.jp//images/book/482319.jpg
素晴らしい日本語
要点がコンパクトに説明されている.
演習書:(必要であれば)
弱点克服大学生の複素関数/微分方程式, 江川博康 著 (東京図書)
予備校の先生が書いた本
シラバス(成績の評価方法,教科書など) 学び方(解ける,よりは,わかるのが大事) 高校数学+線形代数がわかっていないと単位の修得は難しい.
「常微分方程式」はじめに
微分方程式と自然科学の深いつながり
微分方程式:言葉の役割を果たしている
科学の目標:「法則を知り,未来を予知する」
自然科学の法則(の大部分)
微分方程式で記述されている
$ \Longrightarrow 予知や予言:微分方程式を解く
講義のスケジュール(案)
1. 講義全体の概要
2. 自然法則と微分方程式 1
3. 自然法則と微分方程式 2
4. 微分方程式の初等解法 1
5. 微分方程式の初等解法 2
6. 微分方程式の初等解法 3
7. 定数係数の2階線形微分方程式1
8. 演習 (数値的に微分方程式を解く)
9. 定数係数の2階線形微分方程式2
10. 高階線形微分方程式 1
11. 高階線形微分方程式 2
12. 微分方程式と相空間--力学系の理論 1
13. 微分方程式と相空間--力学系の理論 2
14. まとめ
15. 定期試験
16. 解説
微分方程式とは
(普通の)方程式}
$ 3x -12 = 0
問題: 「未知数 $ x を含む等式」
$ \Longrightarrow $ x の値を求める.
答:$ x=4
微分方程式
$ \frac{d}{dt} x(t) = 12 - 3 x(t), $ x(0)=9
$ x = x(t) ($ x が $ t の関数であること)が自明であるので,以下のように書く.
$ \frac{dx}{dt} = 12 - 3 x
問題: 「未知関数 $ x(t) とその微分 $ \frac{d}{dt} x(t) を含む等式」
$ \Longrightarrow 関数 $ x(t) を求める.
答 :$ x(t) = 5 {\rm e}^{-3t} + 4
本当に解になっているか? 確かめてみる.
$ x(t) = 5 {\rm e}^{-3t} + 4 .
$ \frac{dx}{dt} = 12 - 3 x .
左辺=
右辺=
本当に解になっているか? 確かめてみる.
$ x(t) = 5 {\rm e}^{-3t} + 4 .
$ \frac{dx}{dt} = 12 - 3 x .
左辺=$ \frac{d}{dt} x(t) \hspace*{10mm} \Longrightarrow -15 {\rm e}^{-3t}
右辺= $ 12 - 3 x(t) \hspace*{10mm} \Longrightarrow 12 - 3 (5 {\rm e}^{-3t} + 4 ) =
初期条件
$ x(0) = 9 ?
微分方程式とは
$ \frac{dx}{dt} = -x
これ ↑ は,$ \frac{d}{dt}x(t) = -x(t) の略
微分を含んだ方程式.目的は,この式を満たす関数 $ x(t) を求めること.
$ x(t) = e^{-t} は,方程式を満たすので解(の一つ).
$ \frac{d}{dt}x(t) = \frac{d}{dt} e^{-t} = -e^{-t} = - x(t)
例
$ \frac{dx}{dt} = x + y - x(x^2+y^2)
$ \frac{dy}{dt} = -x + y - y(x^2+y^2)
初期値: $ x(0)=x_0=1, y(0)=y_0=4
教科書 第1章は,何度も読み返す.
数値計算
code:ode101.py
import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
from scipy.integrate import odeint
def f(x, t):
t = np.arange(0, 10, 0.01)
x = odeint(f, x0, t)
plt.figure(0)
plt.plot(t, x)
plt.show()
学習目標
微分方程式の意味と働き,使い方
現象を記述する言語としての微分方程式
微分方程式の扱い方や解き方
微分方程式を数値的に解き可視化する技法
話は線形代数.
固有値,固有ベクトル,$ \cdots
新しい概念はほとんど登場しない
応用数学
数学の適用:
ものをある見方で見ること,ある考え方で考えることを,正確に表現すること
具体的なものに抽象的な数学をあてはめ,自分がどういう見方,考え方をしているかをはっきりさせる
数式処理
ギリシャ文字の読み方
$ \alpha アルファ
$ \mu ミュー p.4
$ \gamma ガンマ p.5
$ \beta ベータ p.5
$ \nu ニュー p.6
$ \omega オメガ p.6
$ \theta シータ p.17
$ \phi ファイ p.18
この教科書に載っていないもの
direction field
computer solution methods
see Acheson (1997)
そのほか
指数関数( $ e^t など)が よくでてくる.
$ e^{\mu t} のことを $ \exp (\mu t) と書いたりもする.指数部分を小さくせずに記述できる.
簡単な関数の微積分 p.2
7. $ \int \frac{1}{x} dx = \log |x|
左辺の積分で,$ x \neq 0 . $ x=0 をまたいで積分はできない.したがって,この式全体を考えるときには, a. $ x > 0 しか起こらないか,もしくは b. $ x < 0しか起こらない,2通りを別々に考える.「別々に考えるが」,式は,絶対値の記号を使うと,このひとつの式だけで簡潔に表現できるので,こう記述されている.
$ \int \frac{1}{x} dx = \log x , ~ x > 0
$ \int \frac{1}{x} dx = \log (-x) , ~ x < 0
$ \int \frac{1}{x-2} dx = \log |x-2| の場合は? $ x \neq 2 で,$ x > 2 の場合と $ x < 2 の場合を同時に表現している.
個人的には,教科書からは,こんなのなくせばいい,と思っている.$ \int \frac{1}{x} dx = \log x , ~ x > 0 だけでよい.$ x> 0とか $ x > 2 の場合を考えればいいだけ.現実的には,そういう例ばかりなので.
そうもいかない? → p.26 例題 2.4 を参照!
$ y' = 1 - y^2 を解け
初期値が $ y = 10 なら.値が小さくなっていく.どこまで小さくなるか.
初期値が $ y = -10 なら.値が大きくなっていく.どこまで大きくなるか.
初期値が $ y=1 なら,$ y'=0 なので,ずっと $ y=1.
初期値が $ y=-1 なら,$ y'=0 なので,ずっと $ y=-1.